どうも、拓夏です。今回は、2020年の8月9日~16日に行った道北旅の3日目について書こうと思います。
前回のはこちらからどうぞ。
【3日目】いざ、憧れのサロベツ原野へ!【初山別~稚内】
カァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
早朝のキャンプ場に、けたたましいカラスの鳴き声が鳴り響く。
そんなやかましいカラスの鳴き声にたたき起こされてしまった。スマホの画面で時刻を確認すると、朝の4時だった。
テントから外を見ると、沢山のカラスが飛び回っている。周りのカラスに朝の挨拶でもしているのか、ひっきりなしに鳴き声が響き渡る。
うるせええええええええええええええええええええええええ!!!
思わず、そう叫びそうになったが、周りの迷惑になりそうだからやめておいた。私まで近所迷惑になってはいけない。
二度寝もできない状況だったので、観念して起きることにした。
朝飯代わりのカロリーメイトを食べ、歯磨きをする。
歯磨きついでに天気予報を眺める。今日の天気は、午前中は晴れのち曇りで午後から雨ということだった。昨日は、曇りのち雨だったはずなので、天気は少し好転したようだ。
天気予報を見て、思わずガッツポーズした。今日は、稚内まで走り切る予定だったので、お天気なのはありがたい。
本来であれば、今日と明日は鏡沼海浜キャンプ場で雨をしのぐ予定だった。このキャンプ場にはキャンプサイトだけでなく、200円で泊まれる格安のライダーハウスがあるからだ。しかしながら、昨日の夜に調べたところ、そのライダーハウスがコロナの影響で閉鎖されており、宿泊できなくなっているらしい。雨をしのげる場所を探しに行くためにも、稚内まで走らないといけなかった。
ここから稚内までは、104kmだった。膝のことを考えると、100kmを超える距離を走るのには抵抗があったが、背に腹は代えられない。今回は、少し無理をして稚内までの104kmの道のりを走ることにした。
撤収して6時に出発した。
まずは、きちんとした朝ごはんを食べるために、20km先にある遠別のセコマまで走る。
遠別までの道のりは、留萌から初山別まで来るときの比ではないほどアップダウンが激しかった。ただ、走り始めで足が余裕だったのもあって、順調に進んでいく。
何もない道をずっと進んでいたら、街が見えてきた。
オレンジに輝くセコマの看板を見るや否や、空腹だった私は建物の中に吸い込まれていく。
朝飯のクリーミーカルボナーラとちくわ、補給食の大福とカロリーメイト、アクエリアスを買ってから、店を出る。
セコマのクリーミーカルボナーラ!
セコマの100円パスタは、手ごろだしおいしいので重宝する。旅人の味方。
朝飯をチャージしてから店を後にする。
遠別を出た後は、手塩町へ向かう。
手塩町までの道のりも、遠別と同じくにアップダウンが激しかった。今日は100km以上走るので、膝を壊さないように細心の注意を払って走る。
しばらく走っていると、町が見えてきた。天塩町だ。
天塩町にある、道の駅「てしお」でいったん休憩することにした。
道の駅てしお。
しばらく、ベンチに座って休む。こまめに休むの大事。
見上げると、重々しい鉛色の雲が空を覆っていた。空気は少し湿っており、今にも雨が降りそうな様子だった。
今朝の予報では、午前一杯まで雨は降らないということだったが、もしかすると予報よりも早く降り出すかもしれない。早めに出る必要がありそうだ。
十分に休憩をとってから、飲み物やら補給食やらの確認をする。手塩町を出ると、稚内まで町が一切ない。この先は、全長60kmにもおよぶ広大な湿地「サロベツ原野」が広がっている。
国立公園にも指定されているサロベツ原野には、補給できる場所などほとんどないだろう。今のうちに補給を十分にしておく必要がある。
準備を済ませてから、道の駅「てしお」を出発した。
道の駅「てしお」を出てから、サロベツ原野に向かってひた走る。
初山別から手塩町までのアップダウンが嘘のように、この辺りは平地だった。自転車にとっては走りやすいことこの上ない。
ひたすら走り続けていたら、ついにサロベツ原野の入り口に到着する。
サロベツ原野突入!!
オロロンライン最北区間であるサロベツ原野。
そこは、その名の通り木一本生えてない原っぱが一面に続いている場所だった。
左手側は海で、右手側は湿地、目の前はどこまでも続く道……と、いままで見たことのない壮大な光景が広がっている。目の前を遮るものは全くなく、ただただ開けた景色が目の前にある。
ふと、頭の中に"冒険"という二文字が浮かぶ。そう、まさしくこの場所は”冒険"を連想させるにふさわしい地だった。
サロベツ原野というRPGに出てきそうな名前も相まって、気分はさながらポケモンやデジモンの主人公。この広大な湿地に足を踏み入れた時、頭の中で勝手に「サロベツ原野」とテロップを入れた。
憧れの土地は、憧れていた以上に絶景だ。テンションが爆上がりし、夢中で走り続ける。
しばらく走ると、バカでかい風車がいくつも立ち並んでいる場所にたどり着いた。この風車群は、「サロベツ原野といったらこれ!」と言われるほど象徴的なものだ。
広大な草原に風車群がぽつんとあるのは、なんだか不思議な感じがした。
しばらく前から遠目に見えていたが、いざ近づくとバカでかい風車が立ち並ぶ様は圧巻だった。
思わず、カメラを構えて撮影する。電線が邪魔して綺麗に撮るのが難しかった。
私以外にも、チャリダーやライダーの方々も写真を撮っていた。
満足いくまで写真を撮ってから出発する。
走っていると、何人かのチャリダーさんとライダーさんとすれ違う。すれ違ったライダーさん数人は、すれ違う時にヤエーしてくれた。心があったかい気持ちになる。
どこまでも続く道を夢中で走る。景色は、同じような構成でありながら、少しずつ生えている植物などが変わっていっていて面白かった。
サロベツ原野で発見した植物。
なんじゃこいつ……!!?
この植物は、海沿いの草原(湿地?)にまばらに生えていた。それなりにでかいし、ちょっと気味の悪い形をしている。ふと、バオバブの木みたいだなと思った。
本州ではまず見ることのないであろう植物を見ながら、「ああ、今北海道にいるんだな」としみじみと感じた。
走りながら、左手にある海を眺める。曇天で分かりにくいが、遠目に利尻富士が浮かんでいるのが見えた。
水平線の上に浮かぶ利尻富士は、初山別で見たのよりも大きく見えた。それだけ、北に進んでいるということなんだろう。
もし晴れていたら絶景だっただろうと内心で思う。曇天である今ですら楽しいのだから、晴れていたらもっと楽しいに違いない。心の中で、晴れているときにまた来ようと密かに誓った。
そんなことを思いつつ、広大な大地を駆ける。
ふとサイコンを見ると、いつもよりも巡航速度が上がっていた。気持ちよすぎて無意識に飛ばしてしまっていたようだ。
ごきげんなまま、走り続ける。
まだ道のりは長い。
少し寄り道したときに見た沼(名前は忘れた)。
夢中で走っていたら、いつの間にかサロベツ原野を走り切っていた。
サロベツ原野を抜けた後は、アップダウンが続いた。
空を見ると、海雲が迫ってきているのが見え、身体に吹き付けてくる風も湿っていた。そろそろ雨が降りそうな気配。
雨の中走る覚悟はできていたけれど、できれば濡れたくないのも本心だった。雨が降る前に、なんとか稚内までたどり着きたい。ギアを一段上げ、膝に負担がかからない程度に飛ばす。
飛ばして走っていたが、海抜に入ったあたりから雨が降り始めた。時刻はお昼前で、稚内まであと10kmを切ったところだった。急いで荷物にビニール袋をかけ、レインウェアを着る。
稚内市街地に向かう道は、今までのアップダウンが遊びに思えるほどの急勾配だった。疲れた足に喝を入れてペダルを踏む。
上りのうえ、レインウェアで熱がこもるので暑かった。空から降ってくる雨が冷たくて、いい具合にクールダウンしてくれる。
そんなこんなでびしょ濡れになりながら、ようやく稚内に到着した。
日本本土最北端の町である稚内は、今まで走ってきた大自然が嘘のように都会だった。都会といっても札幌ほどではないが、北海道のなかでもかなりの規模の町であることは間違いない。
休憩できるところを求めて、ひとまず稚内駅へと向かう。
稚内駅と日本最北端の路線。
稚内駅には、日本最北端の路線が展示されている。一目見てみたいとおもっていたものだったので、実物を見ることができてうれしい。
びしょびしょになりながら自転車を壁際に寄せて停める。壁際には、パニアバッグをぶら下げた自転車が沢山停まっていた。私のほかにも多くのチャリダーが雨宿りに来ているようだ。
駅の中で休憩する。稚内駅は、JRの駅と道の駅が併設されている珍しい場所だった。
駅の中は広く、お土産屋や休憩室、キッズルームや映画館などがあった。
特に、映画館があるのには驚いた。もしかすると、日本最北端の映画館なのではないだろうか。
ぐるっと駅の中を回っていたが、お腹が空いてきたのでお昼ご飯を食べることにした。
稚内ザンギ定食。
ザンギ定食は、私が思っていたよりもはるかにボリューミーだった。ザンギはジューシーでおいしく、いくらでも食べられそうだった。小鉢も全部おいしい。
北海道は、どこへいっても食べものがおいしくてありがたい。旅で疲れた身体に、うまい飯が染み渡る。
昼食後は、2Fの休憩室でゴロゴロしつつ、宿を探す。
本来であれば、今日から数日間は稚内森林公園キャンプ場という無料キャンプ場で野営する予定だった。しかし、このキャンプ場は、8/7の大雨の影響により場内で土砂崩れが起こる恐れがあるため、臨時封鎖中になっていた。
去年の道東旅で雨天のキャンプを経験してから、雨の中でのキャンプに抵抗はなくなっていた。だから、キャンプ場さえ空いていれば、今日は野営する予定だったのだけれど、閉まっているなら仕方ない。
そんな事情で、宿を探していたのだった。
いくつかの民宿に目星をつけて電話してみるが、どこも雨をしのぐ旅人たちで一杯のようだった。
空いているのは、値段の張るホテルだけだった。今回は、野営をすることを前提にかなり予算を削っていたので、ホテル代をとられるのはきつかった。
頭を悩ませていると、ふと、ライダーハウス(以降、ライハ)はどうだろうと思いついた。調べてみると、稚内にもライハが一軒あるようだった。
ライダーハウス みどり湯。レビューを見てみると、かなり癖のある賑やかなところのようだった。
私は、ドが三つ着くほどの陰キャだ。だが、同時に姉貴の結婚式の宴会芸に乱入するほどノリの良い親父の血を引いてもいる。不思議と、馴染めるんじゃないかという自信が湧いてきて、そのライハに特攻……もとい泊まることに決めた。
とりあえず、電話をかけてみると、深みのある声が素敵なおばちゃんが出た。泊まりたいのだが空室はあるかと聞くと、あるとのこと。予約することはできないそうなので、チェックイン時間になってから乗り込むことにした。
15時まで稚内駅で時間をつぶしてから、みどり湯へと向かう。
大通りから少し外れた路地を行くと、目的地は目の前だった。
ガレージの中に自転車を停めて、受付へ行く。
受付へ行くと、数人の宿泊客と電話にでてくれたであろうおばちゃんがいた。
おばちゃんに「先ほど電話をかけたものですが……」というと、スムーズに受付は進んだ。
このライハはドミトリー形式(そもそも、個室のあるライハのほうが珍しいが……)なのだが、運よく部屋を丸々一つ借りることが出来た。
受付を済ませた後、入浴券をもらった。このライハの名前にある通り、隣は銭湯になっている(ライハよりも銭湯のほうが本業らしい)。宿泊者は、隣接している銭湯の入浴券をもらうことが出来るのだ。
普段なら、入浴券は一回限りの利用らしいが、今は銭湯主催のお祭りの最中らしく、入浴券を持っていれば出入りが自由に行えるそう。なんだかお得だ。
雨に濡れて身体が冷えていたので、早速、銭湯へいって温まることにした。
銭湯の扉を開けて中に入ると、暖色の照明に照らされた居心地の良さそうな空間が現れた。
床は黄緑色のカーペットが全面に敷かれ、壁際にはテレビゲームと沢山の漫画本のつまった本棚が置かれている。やわらかいクッションもあって、だらだらとくつろげる空間になっていた。
レジ付近には、飲み物を飲むためのテーブルがあり、銭湯で売っている冷凍のポテトやナゲット、ラーメンなどもそこで食べられるようだ。
敷地は決して広くなかったが、そのへんにあるリラクゼーション施設とそん色のない素敵な銭湯だった。
今は、お祭り期間中だからか、スーパーボールやらヨーヨーやらが浮かんでいるビニールプールが所狭しと並べられていた。
玄関先の雰囲気からして、古き良き番屋が現れると思っていたばっかりに、一瞬だけぽかんとしてしまった。
受付の人に温泉の券を渡し、浴室へ向かう。
浴室は、想像していた通りの古き良き銭湯といった感じだった。身体を洗って湯船に入ると、熱めのお湯が冷えた身体をじんわりと包み込む。疲れた身体に染みる。
風呂からあがってから、洗濯機に濡れた衣服をぶちこむ。洗濯の待ち時間に柔軟をして、一日酷使した身体を労わった。膝は特に違和感なく、むしろ昨日よりも快調だった。
洗濯物を待っていると、受付の隣の机で飲んでいたおじさんとお兄さんの二人組に声をかけられた。話を聞くと、どうやら隣のライハに泊まっているらしい。しばし、おじさんたちと談笑する。
おじさんたちは、みどり湯の常連でこれくらいの時期に毎年来ているのだとか。
銭湯の内装の話をすると、こうなったのは今年からだということを教えてくれた。どうやら、クラウドファンティングで募った資金で改装したのだとか(なお、おじさんたちも投資したらしい)。それまでは、古き良き番屋の様相だったのだという。
ちなみに、浴室内はシャワー以外はそのままなのだとか。通りで、浴室だけ雰囲気が違ったわけだ。
お祭りなのもあって、私たちのようなライハの客だけでなく、子供たちも沢山いた。賑わっている様子を見て、地元に愛されている銭湯なのだなあとしみじみと思った。
話している間に洗濯物が終わったので回収する。その後も、少しのんびりしていたらビンゴをやるということでビンゴカードを渡される。
ビンゴカードを握りしめておじさんたちと会話していたが、徐々に瞼が落ちてくる。
ね、眠い……!!
久々に長時間走って身体を酷使したためか、眠気が限界だった。時刻はまだ18時頃だったので、一時間くらい仮眠しようと思い、宿に戻って休むことにした。
ベッドに横になると、一気に眠気が襲ってきた。念のためアラームをかけてから瞼を閉じると、一気に夢の中へと引き込まれていった。
部屋の外から音楽が聞こえてきて、ふと目を覚ました。スマホを見ると、画面に21:36と表示されていた。
や、やってしまった……!!!!!!
私は頭を抱えた。扉の向こうでは、セコマの店先で流れているおなじみの「大空と大地の中で」を合唱する声が響き渡っていた。
このライハでは、21時になると、ある恒例行事が始まる。
まず、宿泊者全員はリビングに集められる。そして、ミラーボールが回る中で自己紹介をしてお互いのことを知った後、松山千春の「大空と大地の中で」を肩を組んでみんなで合唱する。
同じライハに泊まったというだけしか共通点のないの者たちが親睦を深めるきっかけになる重要な催しであり、このライハが癖が強い(そして、賛否が分かれる)とレビューで言われる由縁でもあった。
つまり、私はその重要な行事を寝過ごしてしまったのだった。
気分は、さながら入学初日に遅刻してきた中学生のようだった。翌日から不登校まったなしである。
私は、呆然としながら扉の向こうから流れてくる歌を聞き続けた。
歌はまだ続いていたが、ここで出ていったら完全に茶番である。いくら、ノリのいい親父の血を引いても、ここで出ていくメンタルの強さは私にはなかった。
空を見上げながら、まだ健康に生きている我が父に心の中で問いかけた。「お父さん、あなただったらここで出ていく勇気はありますか?」と……
結局、私は二度寝を決め込んだ。とりあえず、朝までなんとかごまかし続ければなんとかなると思ったのだ。
目を閉じて、遠くへ意識を飛ばすように念じ続けたら眠れたが、次に目を覚ましたのは22:30だった。朝にはほど遠い。
そして、致命的なことにトイレに行きたかった。トイレは、みんながいるリビングを突っ切った先にある。リビングでは、親睦会が続いており、人が立ち退きそうな気配はなかった。いまここで出ていったら気まずさが天元突破だ。
膀胱とギリギリのチキンレースをした後、生理現象に逆らえなかった私は、泣きながらトイレに向かった。
何とかばれないように、極力気配を消して歩く。しかし、運がいいのか悪いのか、銭湯で出会ったおじさんとお兄さんと鉢合わせた。
おじさんとお兄さんは、私を見るなり行方不明者を見つけたような顔で「どこいってたの?」と聞いてきたので、「寝ていました」と素直に答えた。
おじさんに「まじか!全部終わっちゃったよ!」と言われる。はい、知ってます(白目
ちなみに、ビンゴは当たっていたらしい。
トイレを済ませてから、おじさんたちと他愛のない話をした。いままでいった場所の話とかを聞いたりした。
おじさんたちは、バイクのほかに登山なども趣味らしい。いままで登ってきた山の話とかを聞いた。きびしそうな山が多かったが、絶景だということなので、私もいつか登りたいと思った。
それにしても、バイクだと移動距離が自転車の比じゃないくらい長いので、一日にいろんな場所に行けて楽しそうだ。バイクに乗るのもいいかもしれない。
23時になると、おばちゃんから消灯時間の呼びかけがかかる。リビングに集まっていた旅人たちは少しずつ自室に戻っていった。
私もおじさんたちと別れ、自室に戻った。
短い間だったけれど、にぎやかで楽しい時間だった。出遅れたときは地獄にいるような心地だったけれど、なんだかんだで楽しく過ごせてよかった。
中途半端な時間に寝てしまったので、1時頃まで眠れなかった。
何度か目を閉じたり開いたりしていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。
スヤァ……
4・5日目へ続く
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