どうも、拓夏です。今回は、2020年の8月9日~16日に行った道北旅の8・9日目(最終日)について書こうと思います。
前回のは、こちらからどうぞ。
旅の終着点にて。
【8日目】終わりに向かって【礼文~稚内】
寒さで目を覚ます。スマホの時計を見ると、朝の4時だった。
短くて深い眠りと浅くて長い眠りを繰り返していたせいか、頭がぼんやりする。かといって、二度寝する気にもなれず、起き上がる。
テントの入り口を開けて外に出ると、空は相変わらず分厚い雲で覆われていた。ただ、天気予報では曇りだったので、雨が降ることはないだろう。
軽く朝ごはんを食べて、歯を磨く。歯を磨きながら、今日の予定を頭の中で考える。
留萌から始まったこの旅は、明日で終わりだ。明日は昼の飛行機で羽田に戻るので、実質、今日が道北で自由にできる最後の日だった。
かといって、何か特別やることがあるかといわれると、そうでもなかった。天候やらなんやらの都合で、予定をかなり前倒ししてきたのもあって、現時点でもうやることがなくなってしまっていた。つまり、暇だった。
今回の旅の目的は全部達成してしまったし、いまから新しいところに行くのも気が引けた。それくらい、今まで見てきたものはすべて感動的で、道北という土地に満足しきってしまっていたのだった。
いろいろと考えた結果、とりあえず稚内に戻ってみることにした。
テントを畳み、撤収する。
テントの場所だけ地面が乾いていて面白かった。
自転車に荷物一式を括り付けて、港に向かって走り出す。
行きと同じアップダウンをこなし、キャンプ場のある島の北の方から南の港まで走り続ける。
空を覆う分厚い雲が太陽の光を遮断しているため、辺りはやけに暗かった。重苦しい雰囲気のなか、向かい風と闘いながら走る。
海に向かっていく道は、何度走ってもテンションが上がる。
アップダウンをこなしてしばらく走ると、海沿いに出た。港まであと少しだ!
そう思って漕いでいたら、遥か先にある水平線の上の雲が割れて、光を差し始めた。
空から天使でも舞い降りてきそうな雰囲気。
空から降ってくる柔らかい光は、雲の隙間から覗く利尻富士を印象的に照らし出していた。早朝の静謐な雰囲気も相まって、荘厳な光景だった。
そんな景色を横目に、走り続ける。
そこから少し走ると、香深港に到着した。
時計を見ると、時刻は7時半。思ったより早くついてしまった。
出港は8:55なので、1時間半近く暇になる。
受付で乗船券を買い、誰もいない静かな待合室で時間をつぶす。
ベンチに座りながら、今まで走ってきた場所のことを思い出していた。
どこまでも続く海沿いの道・オロロンライン、広大なサロベツ原野、向かい風に吹かれながらなんとかたどり着いた宗谷岬と、そこで食べたホタテラーメンの味、利尻島の夕日ヶ丘展望台から見えるどこまでも続く水平線と、雄大な利尻山のふもとに広がる街並み、日本の最北・スコトン岬で感じた風の冷たさ、澄海岬で見た印象的なマリンブルー……
そして、なによりもそこで出会ったいろんな人達との思い出。
道北は、なにもかものスケールが大きくて、最高に楽しい場所だった。
そんな事を考えていたら、あっという間に時間が過ぎていった。
乗船時間になったので、自転車を引いて船に乗り込む。
客室に行き、適当なところに腰を掛けて海を眺める。フェリーに乗るのも、今回の旅ではこれで最後だ。
しばらくすると、出港の合図とともに船が動き始めた。少し経ってから甲板に上がる。
手すりにもたれかかりながら、少しずつ遠ざかっていく礼文島を眺める。また来るぜ、礼文島……!
また来るぜ……!
しばらくすると、船内に、稚内に到着した旨のアナウンスが流れた。
車両甲板で自転車を受け取り、下船までしばし待つ。
下船前のひと時
目の前の立ち上がっていた船の一部が降りていき、ぱっくりとした空間が前に現れた。
鉄板が陸地に接続し、それと同時におじさんたちがこちらに向かって走ってくる。その後、車やバイクが各々の目的地に向けて走り出していった。
私は、そんなフェリー的な光景を見守ってから、ゆっくりと自転車を引いて降りた。
空を見上げると、礼文島にいたときと同じように分厚い雲が空を覆っていた。
それを見た瞬間、なんとなく、今日は一日ゆっくり過ごそうという気持ちになった。のんびりと最終日を過ごすのも悪くない。
ついでに、今日は奮発して旅館に泊まることにした。いつもは安さ優先で素泊まりにするけど、今回はGotoで安くなっていたので、思い切って朝夕付きのプランにした。Goto様様だぜ……!
最終日は贅沢するぞ……!!
そんな決意を胸に、チェックインまでの時間をつぶすべく稚内駅へと向かう。
稚内駅の中をぶらぶらする。いろんなお土産屋さんを物色しつつ歩いていたら、気になるソフトクリーム屋さんがあったので、そこでソフトクリームを買った。
宗谷の塩ソフト!
濃厚なミルクと塩がいい感じにマッチしててうまい……!!
それに、中までぎっしりソフトクリームがつまってて食べ応えがあった。
ただ、稚内は今日もめちゃくちゃ寒かったので、食べた後は身体が冷えて、しばらく寒さに震えた……(白目
寒さに震えながら、次は最北の路線を見に行くことにした。
駅の2階にいい感じのテラスがあったので、そこから路線を眺める。
駅のホーム。線路は1本のみ。
最北の終点。
全国に張り巡らされているJRの線路の最北がここだと思うと、なんだか感慨深い気持ちになる。いつか、電車旅で北海道を巡るのも楽しそうだ。待ち時間がやばそうだけど。
テラスにいたら風が吹いて寒くなってきたので、建物の中に入る。
どこか座れる場所を探していたら、休憩室の大きな椅子が空いていたので、そこで横になる。
この休憩室がなかなか居心地が良くて、ずっとゴロゴロできそうだった。電源タップもあるから、スマホの充電もできて良い。
なんとなく、隣の映画館のほうが気になって見に行く。大きな画面に映し出された上映時刻表を見ると、丁度いい時間に「のび太の新恐竜」が上映するらしい。これは見ろという神のお告げか……!
ということで、最北の映画館で「のび太の新恐竜」を見ることにした(
映画見るぞ!!
自転車旅中に映画を見るって、なかなかにシュールな状況だと思う。
上映時間になったので、コーラを買って、映画館へ入る。
館内には、まばらに人がいた。てっきり、ほぼ貸し出し状態だと思っていたのだけれど、そんなことはなかった(
のび太の新恐竜は、ストーリーもそうだけど演出がマジで神だと思った。ドラえもんの映画は毎回いいのだけれど、のび太の恐竜が好きだったのもあって、今作は特に刺さる作品だった。
大画面で大迫力の映像を見た後だからか、映画館から出たときに、一瞬、自分が稚内にいることを忘れた(
そろそろ、チェックインの時間だったので、自転車を飛ばして旅館に向かう。
旅館は稚内駅のほど近くにあるので、すぐに到着した。受付でチェックインして、鍵を貰って部屋へ。
部屋は、ダブルだったのもあって広かった。二つあるベッドのうちの一つにダイブする。
久しく、きちんとした寝具とはご無沙汰だったのもあって、旅館のありふれたベッドにめちゃくちゃ感動してしまう。
大の字になって、ただ天井を眺めているだけで幸せな気持ちになった。
ゴロゴロしたり、風呂に入ったりして過ごしていたら、夕飯の時間になったので食堂へ。
旅館の夕食!ホタテが大きくて驚く。
しゃぶしゃぶセット!
いただきます!の掛け声とともに夢中で頬張った。どれを食べてもめちゃくちゃおいしい……!!
連日、走り続けてエネルギー不足だった体に、旅館の栄養満点のご飯が染み渡る……!
つい、ご飯を二杯もお代わりしてしまった。ごちそうさまでした。
満腹で幸せになりながら、部屋に戻ってベッドに沈み込む。
ゴロゴロしながらツイッターを眺めていると、今日の東京の気温が35度と書かれていた。こっちの気温は20度くらいだから、10度以上も違うことになる。
なんだか、遠い世界の出来事のように思えた。こっちは連日寒いので、35度の気温なんて想像できなかった。一週間以上もいると、すっかりこっちの生活に慣れてしまう。
明日、東京に帰るんだなあ……
現実感のないままそんなことを思った。
布団の上でゴロゴロしていたら、おなかがいっぱいだったのと蓄積した疲労が爆発したのとで、気づかないうちに眠りに落ちていた。
スヤァ……
【9日目】さらば、道北【稚内空港~羽田空港】
窓から入ってくる光で目が覚める。時計を確認すると、5時前だった。
きちんとしたベッドで寝たからか、とても快調だった。寝入った時間を考えると9時間以上寝ていたらしい。
今日の昼に稚内空港発の飛行機に乗るまで、まだまだ時間はある。どうせなら、のんびりとした時間を満喫しよう。
せっかく早起きしたので、アマプラでプロメアを見ることにした。
プロメアは、トリガーの作品が好きな私にめちゃくちゃささる作品だった。これ、映画館でみたら絶対に面白かったんだろうなあ……
プロメアをみたり、出発の準備をしたりしていたら、朝食の時間になったので食堂へ。
朝食!
朝食は、素朴で優しい感じの味だった。昨日に引き続いて、またおかわりをしてしまった(
満腹で幸せな気持ちになる。
朝ごはんを食べた後は、荷物をもって旅館を後にした。
いざ、稚内空港へ……!!
時間もまだたっぷりあるので、ゆっくりと進む。
旅館から稚内空港までは、12kmほどだったので、すぐに到着した。
稚内空港!
オブジェがあったから記念撮影。
稚内空港は、比較的小さな空港だった。昔立ち寄った、沖縄の久米島空港と似たような雰囲気を感じた。
航空券を発券し、自転車を預けたらすっかり暇になってしまった。
フライトの時間は、まだしばらく先だった。とりあえず、お土産屋さんを眺めて暇をつぶす。
焼きとうきびおかきと稚内牛乳アイス。
朝ごはんをたくさん食べたのに、もうお腹が空いているので間食(
自転車に乗っていると、やけにおなかが空く気がする。
空港の待合室でぼーっとしているときに、ふと、昨日見た東京の気温のことを思い出した。
昨日はあまり実感がなかったが、いざ、空港で羽田行きの飛行機を待っていると、急に東京の灼熱地獄に帰るのだという実感が湧いてきた。
じりじりと身を焼く暑さを思い出し、思わずげんなりした。
か、帰りたくねえ……!!
身体は、道北の清涼な空気にすっかり慣れてしまっている。東京に帰ったら干物になってしまうかもしれない……
そんな恐ろしい想像をして震えあがっていたら、館内放送が流れる。それは、地獄への呼び声の如く、羽田空港行きの飛行機の搭乗時間が間もなくであると告げた。
道北の涼しさに未練を感じながら、羽田行きの飛行機に乗り込んだ。
飛行機の窓から、道北の少し寂し気で爽やかな空を見上げた。もうそろそろ、非日常は終わり、日常に戻ることになる。
だけれど、不思議と寂しいという気持ちはなかった。胸中には、満足感だけがあった。気温には未練があるけど。
それに、道北にはまた来るような気がしていた。
窓の外の景色が移り変わり、やがて、青一色に染まった。飛行機は稚内を発ち、羽田へと飛び立った。
羽田に着くと、9日間も暑さから逃れていた私を責めるかのように、押し迫る熱波が身を焼いた。
気温は33度。もう人間が生きられる気温じゃないだろ……
そんなことを考えつつ、半分くらい干物になりながら、家の方向に向かう電車に乗り込んだ。
電車はしばらく進むと、地下から地上に出た。
地上に出た瞬間、真夏の太陽の強烈な光があたりのコントラストを一層強くした。黄色い日差しは、周りの物を印象的に映し出す。空は道北でみたものよりも一層青く、浮かんでいる雲も陰影を帯びて立体的に見えた。
ああ、夏に戻ってきたのだなあ……
道北の寂寥感のある空とは全く異なる光景を見て、関東に戻ってきたという実感が湧いた。
電車に揺られながら日常に戻っていく中で、次の旅へと思いを馳せる。
さあ、次はどこへいこうか。
おわり。
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