どうも、拓夏です。
今回は、5/2~5/6にかけて能登半島と金沢を巡ったときのことを書こうと思います。
なぎさドライブウェイにて。
憧れの能登へ(モノローグ)
能登半島。北陸に位置するその半島は、海岸線が岬や断崖等のバラエティに富んだ地形を有しており、島らしい絶景を望むことができる。そんな景勝地が連なる土地であるため、自転車乗りやバイク乗りから根強い人気がある。
私も自転車に乗り始めた頃から、行ってみたいと思っていた場所の一つであった。
そんなことを心に思い描いていたが、様々な事情によっていままでいくことが出来ておらず、かれこれ行きたいと思い立ってから4年が経過していた。
そんなこんなでGWの予定を立てる時期がやってきた。
全国の天気図を眺めながら、一番勝率の高い場所を探す。
今年のGWは、4月中旬の時点で全国がゴミ天気の予報であったが、日が進むごとに徐々に天気が好調していく地域がちらほらと現れた。
そのうちの一つに石川県があった。これは、能登半島に行くしかない……!
ということで、GWの5/2~5/6にかけて、能登半島にいくことにしたのだった。
【一日目】いざ、能登半島へ【金沢~羽咋】
関東から在来線と新幹線を乗り継いで、かれこれ3時間くらいかけて金沢に到着。
駅は通勤・通学の学生さんや社会人の方々で賑わっている。そういえば、5/2は平日だった。
冷たい風が肌を撫でる。関東は、初夏になろうかという時期だけれど、こっちのほうはようやく冬から春になったというような気温だった。こういうところで地域差を感じる。
金沢駅到着!
駅の端に移動して輪行解除する。
ガチャガチャと自転車を組み立てていると、おねえさんが心配そうに話しかけてきた。
おねえさん「あの、自転車大丈夫ですか?壊れちゃったんですか?」
私「いえ、そうじゃなくて、かくかくしかじか(ロードバイクの輪行について話す」
おねえさんは納得して帰っていった。
それにしても、見ず知らずの人に手を差し伸べようとしてくれるとは、なんていい人なんだ。よそ者にあんまり関わりたくないであろう、このご時世の中でそれができるというのはすごいことだと思う。
こういう優しい人がいる地域なんだなあと思い、金沢への好感度が上がった(単純
心が温かくなるのを感じつつ、自転車を組み立てる。自転車にバックを取り付けて、輪行完了。
今回はキャンプツーリングなので、バッグ類フル装備。
今回の装備。キャンプツーリング仕様だから、テントや寝袋も積んでいる。
金沢駅をでて北に進む。金沢は主要な都市なだけあって人や車が多い。車がビュンビュン抜けていく中をおびえながら走る。
道が入り組んでいたので少し迷いつつ、北に向かってひたすら走る。単純な道以外はすぐに迷う。
しばらく走ると、今日の目的地の一つである「千里浜なぎさドライブウェイ」に到着!
千里浜なぎさドライブウェイに到着!
千里浜なぎさドライブウェイは、今浜から千里ヶ浜まで8km続く波打ち際を走ることができる道路。日本で唯一砂浜の波打ち際を走ることが出来るため、全国から数多の乗り物好きが集まることで有名な場所である。
今日は、平日だがGWなのもあって、車もバイクも多い印象だった。どの車両も楽しそうに走っている。
私もそれに続くべく、なぎさドライブウェイに突入したが、砂浜が思ったよりも柔らかくて初手でズッコケた。痛え……
しかも、今回はフラットペダルではなくビンディングペダルで来ていたため、ペダルからシューズを外すのに手間取り、しばらく打ち上げられた魚みたいにビチビチと暴れていた。滑稽。
気を取り直して、ホイールが埋まらないようにゆっくりと走る。
砂浜を走るの楽しい!
砂浜に足を取られるので、普段よりもペダルが若干重たい。ゆっくりとゆっくりと進んでいく。
舗装路みたいに飛ばすことはできないけれど、波打ち際のすぐそばを走れるのは楽しい。波打ち際のギリギリを攻めるとホイールが砂に埋まってしまうので、若干距離を取って走る。
しばらく、波の音を聞きながらゆるゆると走っていたら、終点に到着した。砂浜を走ることはなかなかないので、珍しい経験だった。楽しかった!
なぎさドライブウェイの終点!短い距離だったけれど、走りごたえのある道だった。
終点にはレストハウスがあるので、そこで腹ごしらえをすることに。
お昼ご飯!カキフライ定食!
カキフライ定食は冬季限定のメニューらしいが、なぜか販売していたので注文。
ぷりぷりのカキがとてもジューシーでおいしかった。ごちそうさまでした。
食事後は、レストハウスで少し休憩を取ることに。
レストハウスの中や周辺を散策する。
レストハウス前の展望。日本海らしい荒々しい海。
休憩していたら、膝のあたりに鈍い痛みを感じた。まさか……
足を軽く動かすと、右膝の外側に若干痛みが出始めていた。まさかの一日目で持病を発症してしまうとは……(しかも、40km程度の走行で膝サポーター付きでである。なんでだあ……!)
少し不安を抱えながら、膝が本格的に悪くならないように気を付けながら走ることに。
レストハウスを出た後は、宿泊予定のキャンプ場へと向かう。
大通りとサイクリングロードを10kmくらいゆるゆると走り続けると、今日のキャンプ地である「大島キャンプ場」に到着。
受付のおばちゃんと和やかに雑談しながら受付を済ませ、テントを張る場所を探しに行く。
今日のキャンプ場はフリーサイトなので、好きなところにテントを張っていいことになっている。邪魔にならなさそうで静かそうな場所を選んでテントを張った。
ここをキャンプ地とする!
テントに入ってマットと寝袋を広げて横になる。一畳よりも狭い空間に囲まれながら、テントの黄色い天井を見上げる。心が解放されていく感じがした。
ああ、これがやりたかったんだ……!
妙にしっくりくる感覚を自覚した瞬間、そう思った。
なんだかんだで、自転車旅でテントを使ったのは一年以上ぶり。山やキャンプで使うことはあったが、それも数か月も前のことであり、自分が想像していたよりもテント生活に飢えていたことに気づいた。
妙に心が洗われているような感覚になった。人生にはテント生活が必要なのだ。過言ではない。
しばらくゴロゴロした後、キャンプ場の散策に出かける。
今日のキャンプ地である大島キャンプ場は海沿いにあるので、少し歩くと砂浜にでることができる。
轍。
砂浜を歩くと冷たい風が肌を撫でた。昼間とは思えない肌寒い気温。
目の前の海は、荒い波に押し流された泡で波打ち際が白く染まっていた。空を眺めると初夏の昼間とは思えないほど淡い空色。どことなく寂寥感を覚える景色だった。
目の前の情景にどことなく既視感を覚え、どこだっただろうと思いを巡らして、気づく。一昨年の夏に道北を旅したときに見た日本海が丁度こんな感じだった。
あの時も、真夏とは思えない肌寒さに震えながら、風で波立つ日本海を眺めていた。初めて見る日本海は厳しさと寂寥感に満ちていて、今まで見てきた瀬戸内海や沖縄の海が持つ温かさと対称的であったことを覚えている。
冷たい風に吹かれながら、目の前の景色をただ眺めた。さみしさも旅情であり、旅をする上で欠かせないものだと思う。寂しいというのは、決して悪いことではないのだと思う。
しばらく海を眺めてから、テントに戻る。
混む前に風呂を済ませたかったので、荷物をまとめて3kmくらい走ったところにある温泉へ。
水風呂と温泉で混合浴をしてさっぱりする。少し熱めのお湯が全身をほぐしていってくれるので心地よかった。
風呂から上がると、よくわからん飲み物を飲んだり、休憩室で念入りにストレッチをする。
ストレッチをしていたら、膝の痛みがなくなった。どういうことだ……?
急になにもなくなって不安になるが、ともかく走れるようになったのはいいことだと割り切る。
ストレッチを終えて温泉を出る。
キャンプ場に戻る道中に定食屋さんがあったので、そこで食べていくことにした。
チンジャオロース定食!
ご飯を食べ終えて外に出ると、辺りはすっかり日が暮れていた。
刺すような寒さが湯上り後の身体を襲う。海風が強く、体感気温は真冬並みだった。寒さに震えながら、キャンプ場に向かってひた走る。
外灯の少ない道をVOLT800の光を頼りに走り続ける。少しだけ道に迷いつつ、キャンプ場にたどり着いた。
キャンプ場についた瞬間、刺すような寒さが和らぐ。周囲の林が風を遮ってくれるため、温かく感じるのだろう。防風林がここまで体感気温に影響を与えることを知って驚く。
自転車を停め、早々にテントに入り寝袋に潜り込んだ。テントの中は温かく、寒さで凍えた身体が少しずつほぐれていく。
テントでぬくぬくしながら時間を過ごす。テントの中でyoutubeを見たりネットサーフィンするのが地味に好きだったりする。
しばらくゴロゴロしていたら、就寝時間になったので寝る。
50km程度しか走っていないが、久々に自転車に乗って疲れたのか、すぐに眠りにつくことができた。スヤァ……
【二日目】日本海へ【羽咋~輪島】
日の光の眩しさで目が覚める。時刻は朝の5時。
黄色い天井を見て、ああそういえば今は旅をしているんだったと気づく。
朝5時にしては肌寒い。寒さに震えながら支度をする。
今日は、輪島まで走る予定だった。
大島キャンプ場から輪島までは、大体70kmくらい。普段なら大した距離ではないけれど、膝を若干痛めてしまったので、今日は無理せずゆっくり走ることにした。
軽く屈伸をすると、膝の外側にゆるい痛みが走る。走行する分には問題ないが、本格的に壊さないように気を付けなければならない。最悪は輪島でリタイアすることになるかもしれないが、とりあえず走れるところまで走ろう。
若干の不安を抱えつつ出発。
空を見上げると、鈍色の雲が頭上を覆っていた。今回の旅は全日晴れの予定だったのにどうして……(白目
今日は海沿いをひたすら走る。冷たい海風が吹いていて肌寒い。
海沿いをひたすら走る。走っていたら、雨がぽつぽつと降ってきた。うそだろ。
空を見上げると、私の頭上だけ雨雲が覆っていた。なぜェ……(白目
私の頭上にだけある雨雲。どうして……
今朝見た天気予報によると、今日の降水率は10%。その10%を引き当ててしまうとは……
雨雲を引き寄せてしまう己の体質を恨む。
そして、もう一つ問題が発生していた。ビンディングペダルがはまらないのだ。
昨日、なぎさドライブウェイではしゃぎすぎたから、シューズの部品の中に砂が入ってしまったのかもしれない。ふんだりけったりだあ(白目
小雨に打たれながら、はまらないペダルでのろのろと走る。
しばらくして、「能登半島国立公園 能登金剛」に突入する。
能登金剛とは、福浦港から関野鼻までの海岸線のことで、日本海の荒波が作り出した険しい断崖と奇岩が約30kmに渡って続いている。そのTHE・日本海といった迫力のある景観が魅力の場所であり、能登半島のなかでも屈指の景勝地として知られている。
左手に見える美しい海と断崖の織り成すワイルドな景観を眺めながら走る。
朝の小雨は一時的なものだったらしく、天気はすっかり回復していた。空と海の青が美しい景色を眺めながら、テンション爆上げの状態で走る。
海と断崖。荒波にもまれて削れた断崖と奇岩が美しい。
能登金剛の中でも、有名なところといえば「巌門」なので、そこを目指して走る。
しばらく走って到着するが……
わあお……(白目
某ウイルスの蔓延防止のために、しばらくは閉鎖している模様。
これがざつ旅現象……
空いてないのなら仕方ないので、次の目的地を目指して走る。
海岸線沿いをゆるゆると走っていると、次の目的地である「機具岩」に到着。
機具岩!
機織りの道具に似ていることから、この名がつけられたのだとか。機織りの神様の伝説にも関わっているらしい。
夕焼けスポットとしても知られており、夕方には綺麗な夕日が見られるのだとか。機会があったら夕方ごろにまた来てみたい。
再び、海岸線沿いを走り続ける。しばらく走ると、「世界一長いベンチ」に到着。
世界一長いベンチ。本当に長い。
このベンチの全長は、なんと460.9メートルらしい。とてもでかい。とてもでかいがゆえに、平成元年に世界一長いベンチとしてギネスブックに登録されたのだとか。
機具岩同様に、この付近も夕焼けスポットとして有名な場所らしい。元々、「日本海の夕日を見てほしい」という地元民の思いから制作されたものなのだとか。
ベンチに腰掛けながら夕日を眺められたら素敵だろうなと思う。
愛車とともに。
しばらく、ベンチで休憩してから、次の目的地に向かって出発する。
海沿いを走ったり内陸を走ったりしながら、ゆるゆると進む。
海沿いを走っていたら、次の目的地である「ヤセの断崖」に到着。
「周辺の土地がやせていたこと」や「断崖に立つと身がやせる思いがすること」から、この名前が付けられたのだとか。ちなみに、映画の撮影地になったこともあるらしい。
自転車を降りて、展望台まで歩く。
突き抜けるような開けた景色に思わず息をのむ。一言でいえば絶景だった。
眼下には荒々しい波、視線を上げるとどこまでも続く水平線が続いている。波と共に運ばれてくる風は冷たく、身体の熱を奪っていく。
日本海の鮮烈なマリンブルーは、宝石のように美しかった。それでいながら、断崖に打ち付ける波は荒々しく、ただ美しいだけの海ではないことを物語っている。美しいだけでなく、どこか恐ろしさを感じさせる海であり、それが日本海の魅力なのかもしれないと思った。
ヤセの断崖を後にして進む。
日本海のマリンブルーを眺めながら走る。テンションが上がりすぎて振り切れた。
海沿いを走っていると、トトロ岩に到着。
トトロに似ていることから名づけられたらしい。確かに、形がトトロに似ている気がする。
このあたりは、こういう奇岩が沢山あって楽しい。日本海の荒波が作り出した芸術作品みたいな岩がそこかしこに転がっている。
海沿いを外れてしばらく走っていると、定食屋を見つけたのでお昼にすることにした。
メバルのから揚げ定食!
サクサクのから揚げをポン酢につけていただく。外はサクサク、中の白身はふわふわでおいしかった。ご馳走様でした。
腹ごしらえを終えて、再び走り出す。
海沿いを抜けて、田園地帯に入る。川のせせらぎが心地いい。
田園地帯をしばらく行くと、今日の終着点である「輪島」に到着した。
輪島に到着!
時刻は13時半。思ったよりも早く到着してしまった。
ただし、今日に限って言えば、早く到着してよかったと言える。
なぜかというと、宿がきまっていないから(白目
実は、泊まろうとしていたキャンプ場が某ウイルスの影響で臨時休業となっており、泊まれる場所がなくなってしまったのだった。ちなみにじゃらんで探したところ、泊まれる場所はないと表示された(白目
仕方ないので、神にもすがる思いで観光協会へ。
受付のおねえさんに泊まれる場所がないか尋ねると、気まずそうな顔で「あー、今きまっちゃったんですよね」とのこと。終わった……(白目
中空を呆然と見つめながら、ダメ押しで「キャンプ場でもいいんですが……」と言ってみる。
すると、おねえさんは「なら、ここなら空いてると思います。」と言って、パンフレットを一枚取り出してマーカーで場所に印をつけた。よくよく見てみると、それは元々私が泊る予定だったキャンプ場だった。
おねえさん曰く、GW期間中はやっているのだとか。マジか。
ネットの情報は、たまにあてにならない。
ともかく、宿なしを免れてそっと胸をなでおろす。
キャンプ場まで自転車でのろのろと走る。いかにも港町といった様相の街並みを眺めながら走っていると、道を歩いていたおばちゃんに声をかけられた。
おばちゃん「どこまでいくの?」
私「キャンプ場までです!」
おばちゃん「袖ヶ浜? なら、この道をまっすぐ行けば大丈夫よ。」
私「ありがとうございます!」
おばちゃんに感謝の言葉を告げて、走り出す。
それにしても、あまりに自然に話しかけられてびっくりしてしまった。旅先で興味をもって話しかけてもらえることは少なくないが、ここまで自然に(それこそ近所の人に挨拶するような感じで)話しかけられたのは初めてだった。少しだけ心が温かくなる。
おばちゃんの言う通り、道をまっすぐ進むと、今日のキャンプ場である「袖ヶ浜輪島キャンプ場」に到着。
受付を済ませ、キャンプサイトへ。自転車は乗り入れ不可なので、適当な場所に自転車を括り付ける。
それをみていた管理棟のおじちゃんが話しかけてくる。
おじちゃん「なあ、明日何時出発?」
私「朝の7時には出る予定です。」
おじちゃん「あちゃー、じゃあ無理だなあ。管理棟の中で預かろうかと思ったんだけど、開くの8時からなんだわ」
おじちゃんの優しさにほっこりしながら、気持ちだけ受け取ることにした。心が温かくなる。
初日に出会った金沢駅のおねえさんやさっきのおばちゃんもそうだけれど、今回の旅ではやたらと親切な人に出会う。これは、石川県という土地柄によるものなのか、それとも私の運がいいのかはわからないが、どちらにせよ、とてもうれしいことだと思う。
荷物をもってテント場へ。
海沿いの展望の良いところでテントを設営する。
今日の宿。
海沿いの景色を眺めながらのんびりする。
海がすぐ目の前にある。うれしい。
テントの中でゴロゴロしたり、風呂に入ったり、隣のおじさんと話していたら、すっかり日が傾いて夕方になった。
黄昏時の淡い雰囲気の中、夕焼け空をただただ眺める。
日本海に沈む夕日。
真っ赤な日の丸が水平線に沈んでいく。鮮烈なオレンジの光があたりを照らす。
今まで見た中で一番綺麗な夕日を目の前にして、ただ息を飲んだ。絶景だった。
日が沈むと、辺りは真っ暗になって一気に気温が下がった。刺すような寒さに震えながら、夕日を見る前に洗濯ものを放りこんできたコインランドリーへと向かう。
コインランドリーで洗濯物を回収した後は、腹ごしらえをしに市街地へ。
ふぐ漬け丼!
たれにつけられたふぐと卵黄が絡み合っておいしかった。味噌汁もダシがきいていておいしい。ご馳走様でした。
店を出て、再びキャンプ場へと走る。
刺すような寒さが全身を襲い、震えが止まらなかった。あたりには灯りがほとんどなく、VOLT800だけが頼りだった。
暗闇と寒さに震えながら、見知らぬ土地を走っていると心ぼそい気持ちになる。一刻も早くキャンプ場にたどりつきたかった。
そんな気持ちで、海沿いの冷たい風を受けながら真っ暗闇の中を進んでいると、鮮烈な光が頭上を駆け抜けていった。
なんだろうと思って見上げると、海に向かって灯台から光が放たれているのが見えた。灯台の光は、黒々とした海を照らし出している。それを見た瞬間、なぜだかはわからないがとてもほっとした。
灯台は、海路の道しるべであり、灯り一つない夜の航海を幾度もなく支えてきた存在である。
そんな存在のでかさが、心細さをかき消していたのだと思う。灯台は陸路の道しるべではないが、今の私が暗闇の中を航海している船と似たような状況であったからか、やけに心強く感じたのだった。
灯台から勇気をもらって海沿いを駆け抜ける。しばらく走ると、キャンプ場に到着した。
急いでテントの中に入り、寝袋に潜り込む。テントの中はほんのり温かかった。
テントに戻ってからは、寝袋の中でぬくぬくしながら晩酌したりして過ごす。
アルコールの効果で、凍えた身体が徐々に温かくなっていく。心地よい温かさにうとうとしていたら、いつの間にか眠りに落ちていた。スヤァ……
続く
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