【2020年道北旅】日本最北端を目指す旅【6日目】

2021年2月6日

 どうも、拓夏です。今回は、2020年の8月9日~16日に行った道北旅の6日目について書こうと思います。

 前回のは、こちらからどうぞ。

 宗谷岬にて。

【6日目】最北証明書獲得ツアー【稚内~宗谷岬】

 カラスたちの鳴き声で目を覚ます。時刻は4時だった。
 携帯のアラームよりもカラスにおこされることの方が多くなっているような気がする。
 丁度、トイレに行きたかったのもあってテントから出た。
 空を見上げると、もうすでに日が昇っていて明るかった。眠い目をこすりながらトイレへ行く。
 
 用を済ませてからテントへ戻る。シュラフに潜り込んで二度寝をしようとしたが、カラスの鳴き声がうるさくて眠れなかった。しかたないから、探索に出かけることにした。
 
 キャンプ場を出て、あてもなく歩く。
 早朝の利尻は、先ほどのカラスの声が嘘のようにとても静かだった。島特有のゆったりとした時間の流れを心地よく思いながら、のんびりと歩く。

 ふらっと立ち寄った神社。

 神社で引いたおみくじ。結果はぼちぼち。

 しばらく歩くと、海沿いの道に出た。
 水平線の上には雲が浮いていた。早朝の淡い陽光を受けて輝いている海は綺麗だった。
 そのまま、海沿いをのんびり歩いていく。そうしたら、途中でライハで同室だったおねえさんと出会った。
 おねえさんは、ランニング中らしい。これから自転車で走るというのに、朝からランニングをするなんて大分タフだ……!
 なんとはなしに、今日の予定の話になった。おねえさんは、昼に出る礼文行きの船に乗って礼文島に行くらしい。
 私も、今日は礼文島に行く予定だった。ただ、私も礼文島にいくとなると、またおねえさんと鉢合わせるかもしれない。一人旅をしているときに同じ人とずっと関わっているのは、なんとなく面白くない気がした。旅的な意味で。
 という、しょうもない理由で礼文に行くのは明後日にし、稚内に戻ることにした(おい

 帰り道にあるセコマが開店していたので、朝ごはんを買った。そのまま、イートインで買った朝ごはんを食べた。
 箸を割って、「食べるぞ!!」と思っていたら箸の片方を床に落としてしまう。ま、まじか……(白目
 片方だけになった箸を見つめながら途方に暮れていると、店員のお兄さんが新しい箸を持ってきてくれた。あなたは神ですか……!!(感動

 ご飯を食べ終えてからセコマを後にする。時刻をみると、6時半だった。稚内行きの船は8:55発だったはずなので、そろそろ撤収をして港に向かわなければならなかった。
 
 キャンプ場に戻って荷物をまとめ、港へ向かう。
 朝の港は静かだった。受付を済ませ、誰もいない待合室で時間をつぶす。
 出港40分前に車両用の搭乗列に並んだ。乗組員のおじさんが、バーコードリーダーで自転車に着けてある乗船券をスキャンし、乗船手続きをする。
 そんな様子を眺めつつ、乗船までの時間を待った。見上げた空は重たい色をした雲に覆われていて、今日がゴミ天気であることを静かに告げていた。
 そんなこんなで乗船する。車両甲板で愛車を預けてから客室へ。朝一の便だからか、人は少なかった。

 出港の汽笛と共に、窓から見える利尻島は遠ざかっていく。
 帰りのフェリーはいつもさみしいものだけれど、今回は不思議と寂しくなかった。なんとなく、利尻島にはまた来るような気がした。
 「次は、利尻山を登りたいなあ」なんて思いながら、遠ざかる利尻島をいつまでも見つめ続けた。

 じゃあな、利尻島!また来るぜ!

 しばらくすると、稚内についた。ただいま稚内!
 自転車を引きながら下船する。そして、自転車に跨って走り始める。
 今日の目的地は、本土最北端である宗谷岬!
 日本本土四極(日本の東西南北のそれぞれ一番端)の一端であり、日本縦断の出発点としても親しまれる宗谷岬。一度は訪れてみたいとずっと思っていた場所だ。
 これからそこに行くのだと思うと、テンションが上がる!
 空は相変わらず白い雲で覆われていて不穏だが、そんなの関係ねえ……!
 宗谷岬を目指して爆走する。

 煮え切らない天気だ。

 向かい風が吹き付けてくる中、踏ん張って走り続ける。沖縄のやんばるに行ったときもそうだったけれど、どうして私が最北にいこうとするときは向かい風がすごい勢いで吹き付けてくるんだろう……(白目
 道が緩やかな坂道なのに加えて、向かい風がものすごい勢いで吹き付けてくるので、なかなか進まない。そのうえ、霧雨まで降り始めてきた。
 雨と風の影響で身体が冷えていき、さらに動きが悪くなっていく。どこかで休憩したかったが、コンビニ一つない道が続いているので、ひたすら耐えて進み続ける。というか、トイレに行きたい。

 いろいろなものに耐えながらしばらく走り続けると、オレンジ色に輝く看板が見えてきた。セコマだ。
 砂漠でオアシスを見つけた旅人のように、私はセコマに駆け込んだ。セコマの中は、雨と風の影響がないので温かかった。
 トイレに行き、水と栗どら焼きと抹茶どら焼きを購入して出る。
 おなかが空いていたので、栗どらやきにかぶりつく。滑らかな舌触りと共に、栗の素朴な甘みが口いっぱいに広がる。うまい。

 カロリーを摂取したからか、身体が少し温かくなった。
 セコマを後にして走り出す。目の前は霧雨でうっすら白くなっており、道の先はおぼろげにしか見えなかった。
 まだ見ぬ宗谷岬を目指して霧雨の中を走り続ける。寒さに耐えながら走っていたら、なんだかんだで宗谷岬にたどり着いた。

 日本最北の地、宗谷岬!!

 ああ、宗谷岬に来たんだな……
 
 宗谷岬を象徴するオブジェクトを目にして、日本の最北端にきたのだという感慨が胸中に広がった。
 空は相変わらず煮え切らない色をしているが、憧れの光景は少し輝いて見えた。
 なお、こんな天気だったけれど、宗谷岬のオブジェクトの前には、記念撮影をする人の列ができていた。こんな天気でも人が集まるんだなあ。
 宗谷岬を撮影したいときは早朝に来るといいという話は聞いていたが、確かにこの感じだと早朝くらいしかゆっくり撮影できる時間はないかもしれない。
 
 記念撮影をしてオブジェクトを後にし、お土産屋さんに向かう。
 店には、宗谷岬Tシャツなどのグッズが並んでいた。それらを眺めつつ、レジに向かう。
 買いたいものは一つだけだった。

 日本最北端の証明書!

 このお土産屋さんでは、日本最北端到達証明書を買うことが出来る。ここにきた目的の一つだった。
 証明書は名刺くらいのサイズだった。自転車で旅をしていると、かさばるものはもってかえることができないので、小さいサイズにしてもらえるのはありがたい。
 なお、今日は、日本最北端"系"の証明書をめぐる旅になる模様。

 目的のものも買えたので、次の目的地へ。次の目的地は、宗谷岬のすぐそばにある。
 宗谷岬を出て、急な傾斜を自転車で押しながら上っていくと、その店はあった。

 元祖帆立ラーメン間宮堂。

 元祖帆立ラーメン間宮堂。この店は、今回の旅で絶対に立ち寄りたいと思っていたところだ。好きな旅系Youtuber兼写真家の方がここのラーメンをおいしいと紹介していて、気になっていたからだ。
 店に入ると、中にはお客さんが沢山いた。外にも待っている人が大勢いたので、しばらく待つことになりそうだった。
 店員さんに名簿を渡されたので名前を書く。店員さん曰く、40分くらいは待つと言われた。
 待つとは思っていたが、40分と聞いて驚いた。やっぱ人気なんだなあ。

 ラーメン屋の近くでぶらぶらする。

 ラーメンは来たに来るほどうまくなる!

 待っていると、雨が降ってきた。
 今日は晴れか曇りの予報だったのに雨が降るとは。やはり私は雨を引き付ける才能があるようだ。
 なんて思いながら雨雲レーダーを見ると、なんとそこには雲が一つも映っていなかった。どういうことなんじゃ。
 困惑しながら空を眺めていたら、急に晴れ始めた。陽光が冷えた身体を温めていく。太陽ってこんなに温かいんだなあ。

 50分くらいして、店員さんから名前を呼ばれたので、店内に入る。
 席につき、塩ホタテラーメンとホタテバターを頼んだ。本当は、ホタテラーメンだけ食べる予定だったのだけれど、メニューを眺めていたらホタテバターが気になってしまった。
 日本最北で食べるホタテとか絶対にうまいに決まってる……!
 
 注文してすぐに、頼んでいたものは来た。

 塩ホタテラーメン!

 ホタテバター

 まず、塩ホタテラーメンをいただく。
 スープはホタテ味が濃縮されており、とてもおいしかった。まるで、ホタテをそのまま飲んでいるようだ……!
 ここまでうまいラーメンは、生まれて初めて食べたかもしれない。
 ホタテバターも、肉厚でジューシーだった。ホタテの味がバターの味に負けておらず、良い感じにマッチしている。うまい。
 夢中で食べてたら、どちらもなくなってしまった。ごちそうさまでした!

 間宮堂を出てから、再び宗谷岬へ。どうせなら、晴れた宗谷岬の写真を撮りたかった。

晴れの宗谷岬!

 満足いくまで写真を撮ってから、再び稚内に向かって走り出す。
 行きのときに苦しめられた向かい風は止んでおり、空はさきほどの曇天が嘘のように気持のいい青空が広がっていた。

 気持ちのいい天気だ。

 風がないのもあって、するすると進んでいく。稚内へは、すぐに到着した。
 稚内市街地についてからは、稚内市役所へ向かう。ここでも、ある証明書を貰えるのだ……!

 自転車を市役所の前に止めて、中へ入る。
 だが、どこで証明書を貰えるのかいまいちわからなかった。ホームページに書いてある窓口がどこにあるのかわからない。
 とりあえず、受付に行って聞くことにした。受付のおねえさんに、ホームページの画面を見せながら話しかける。すると、おねえさんはなにか納得したかのように微笑み「ああ、それならここで発行できますよ。」といった。
 おねえさんにお願いして、証明書を発行してもらう。おねえさんは、紙を一枚取り出していろいろ書き込んだあと、私にそれを手渡した。
 日本本土四極 最北端 出発・訪問・到達証明書と書かれたそれは、最北にきたことを証明するものだった。
 「お疲れ様でした。」という一言と共に証明書を貰うと、何とも言えない達成感が胸の中に広がっていった。

 日本最北端制覇だ……!

 日本本土四極の最北端到達証明書!

 裏面。ちゃんと宗谷岬が映ってる。

 ちなみに、日本本土四極証明書は、納紗布岬(最東端)、神崎鼻(最西端)、佐多岬(最南端)でそれぞれもらうことができる。日本本土四極証明書をすべて集めると、裏面がつながり、一枚の証明書になる。また、それをもってどこかしらに申請すると、新たに全部合併した日本本土四極到達証明書を貰うことができるとかできないとか(曖昧な知識

 とりあえず、生きているうちに達成したかったことを達成できてホクホク。この調子で、他の日本本土四極証明書も集めたい。
 証明書を郵便局で郵送してから、本日のキャンプ場へ向かう。

 今日、利用するのは稚内森林公園キャンプ場だ。7日の大雨の影響で土砂崩れの恐れがあるということで臨時閉鎖していたが、早くも復旧したようだった。
 ちなみに、ここも無料キャンプ場だ。利用しない手はない……!
 
 稚内森林公園キャンプ場の入り口は、郵便局から遠くないところにあった。
 稚内公園の中にあるそのキャンプ場は、果てしない坂道の先にあるようだった。自転車を引きずりながら、公園内の壁のような坂道を上る。
 私を追い越していったジムニーが、ものすごいエンジン音を響かせながら上っていった。山道に強いジムニーでも厳しいとは……!
 戦慄しながら、自転車を押して歩く。スネの筋肉が痛くなって、度々止まりつつも、気合で進む。

 公園内にいた鹿。普通にいるのビビる。

 なんとか、キャンプ場までたどり着く。キャンプ場は、既に沢山の人達で賑わっていた。
 見た感じだと、ソロか2人組のライダーさん、もしくは少人数で車で来ているような人たちのようだ。

 キャンプ場は、どこにでもある林間キャンプ場だった。すごくここがいい!というところは特にないのだが、いい意味で素朴でとても落ち着く場所だった。
 ここにいる人たちも、その雰囲気を大切にしているようで好感が持てた。一目みて、「ああ、このキャンプ場好きだな。」と思った。
 ここは、自転車乗り入れ可のキャンプ場なので、愛車を押して設営場所を探す。

 キャンプ場のトイレ。無料キャンプ場にしては、かなり綺麗だと思う。

 キャンプサイトの一部。広大な林間(芝生?)キャンプ場が広がる。

 東屋。そこそこ広いから、雨の日はここにテント(一人用)張るのもいいかも……?

 炊事場。ここも結構綺麗な印象。

 いい感じに平らな場所を見つけたので、そこに設営することにした。

 ここをキャンプ地とする……!

 テントを設営した後は、野寒布岬(ノシャップ岬)に向かって走り出す。
 キャンプ場から近かったので、すぐに到着した。
 ノシャップ岬は、お盆なのもあって子供連れや観光客で賑わっていた。

 ノシャップ岬のイルカのオブジェクト。

 少し写真を撮って、すぐに出発する。本命の目的地は、もう少し走った先にある。

 こういう開けた道好き。

 傾いていく太陽を眺めながら走ると、目的地の「稚内温泉 童夢」はすぐそこだった。
 ここでは、日本最北端の温泉の入浴証明書を発行してくれる。これで日本最北端の証明書は全部そろう……!
 券売機で入場券を購入して中に入る。どこで証明書を貰えるのかとキョロキョロしていると……



 お、おい、マジかよ……!!!

 どうやら、コロナの影響で証明書の発行を一時的にやめているらしい。なんということだ。
 思わず項垂れる。このためにここまで来たのにいいいい!!

 3秒くらい虚無を抱えていたが、もらえないもんは仕方ない。
 気を取り直して、温泉に入ることにした。

 ここの温泉はナトリウム系の緑色の湯で、触るとすべすべした質感をしていた。肌がきれいになりそう。
 露天風呂に向かうと、海と利尻富士が目の前に現れる。展望最高かよ……!!
 夕日になりかかった太陽を見ながら、温泉に浸かって癒された。

 風呂やサウナを堪能してから、温泉を出る。
 日が暮れかかっているから早く帰りたかったが、少し休みたかったので休憩室で一休みする。ゴロゴロしていたら眠気がやってきたので、眠い目を擦りながら温泉を出る。

 温泉を出て、キャンプ場に向かって走る。
 だんだんと暗くなっていく景色を見ながら、まばらにある外灯とVolt800の灯りを頼りに走る。

 走っていると、夜闇にオレンジ色に輝く看板が見えた。セコマだ。
 丁度良かったので、晩飯と明日の朝飯を調達することにした。
 晩飯と朝飯をもって、レジに向かう。

店員さん「セイコーマートのカードないですかー?」
私「あ、大丈夫です(持ってないですの意」
店員さん「大丈夫じゃないんですよね~」
私「????」

 店員さん曰く、カードを作ってくれた方がいろいろ助かるのだそうだ。なるほど。
 ノリがいいおっちゃんだったのもあり、そこから話が広がった。
 「本州の人間だから使うことあんまりないと思うんですけど……」というと、おっちゃんに「記念に作る人もいるよー」と言われたので、記念に一枚作ることにした。

店員さん「お客さんいい人ですねえ。」
私「よく言われます。」

 セコマを後にして、キャンプ場まで走る。
 暗闇の中をライトを頼りに走る。キャンプ場の入り口につくと、そこは市街地よりもさらに暗かった。自転車のライトがなかったら、何も見えないレベル。
 果てしない坂を上って、なんとかテントにたどり着いた。
 キャンプ場では、晩御飯を作ったり、仲間内でささやかにお話している人たちが多かった。
 話声も大きくなく、むしろささやかに人の声が聞こえてくるのは心地よかった。ここには、キャンプ特有のゆったりとした時間が流れていて、ここにいる人たちはそういう空間を大切にしている風だった。それを感じて、再び「このキャンプ場が好きだな」と思った。

 テントに戻って、私も静かに過ごした。晩御飯を食べ、歯磨きをしてから空を見上げたりして過ごす。
 寝袋に入ると、眠気が一気に襲ってきた。眠気のままに意識を手放すと、すぐに眠りに落ちた。

 スヤァ……

 7日目へ続く