どうも、拓夏です。今回は、2020年の8月9日~16日に行った道北旅の2日目について書こうと思います。
前回のはこちらからどうぞ。
夕暮れ時、みさき台公園キャンプ場にて
【二日目】北へ……!【留萌~初山別】
アラームの音で目を覚ます。時刻は朝の5時。
まだ眠い頭のまま撤収作業をする。身支度を整えてなんやかんややっていたので、留萌を出たのは6時半頃だった。
少し肌寒い早朝の空気の中を走る。起きたときは寝不足で頭がぼんやりしていたけれど、冷たい風を受けながらペダルを漕いでいたら少しずつ目が覚めてきた。
留萌市街地を抜けると、目の前に海が見えてきた。
海だ!
目の前の海を見てテンションが上がる。昨日、十分すぎるほどに見たはずなのに、それでもいつみても何度見ても海を見るとテンションが上がってしまう。
それに、もう一つテンションが上がってしまう理由があった。それは、ここが「オロロンライン」だからだ。
オロロンラインとは、小樽から稚内までを繋ぐ約380kmに渡る海沿いの道のこと。ひたすら海沿いを走れることから、古くからバイク乗りや自転車乗りに人気のある道だ。
オロロンラインは、人生で一度は走りたいと思っていたあこがれの道だった。その地に足を踏み入れているのだから、気分が高揚するのも仕方ない。
ちなみに、今回の旅の8割はオロロンラインを走ることに費やされる。つまり、ここは今回の旅のスタート地点といっても過言ではなかった。
海沿いの道を飛ばして走る。
ひたすら、海沿いの道を進む。
しばらく走っていたら、道の駅「おびら鰊番屋」が見えてきたので、そこで休憩することにした。
道の駅「おびら番屋」は、重要文化財である「旧花田家番屋」に隣接している。旧花田家番屋は、中にはいっていいのかわからなかったので、外側だけ眺めることにした。
番屋というのは、かつて北海道でニシン漁が盛んだった時に漁の拠点として建設された建物のことだ。「ニシン御殿」とも呼ばれる番屋は大規模で豪華なものが多く、その威容からも、かつてのニシン漁がどれだけ盛況だったのかを知ることが出来る。
実際に、ニシン漁を行っていた漁師「やん衆」は、ニシンの群来があれば銀行員の月給の倍近くも稼いだそうなのだから恐ろしい。
ニシン漁の繁栄を示すように、今も各地に番屋は残っているが、重要文化財として指定されているのは「旧花田家番屋」だけなのだという。
番屋を一通り眺めたあとは、海沿いを探索する。
写真をパシャパシャとっていると、おじいさんに話しかけられた。挨拶をすると「あんた女の子か!」と言われた。声で私を女だと気づくとは、この爺さんやりおる……!
心の中の戦慄を気取られないようにおじいさんと話す。おじいさんの活舌の悪さと私の耳の悪さがユニゾンし、言葉のほとんどは聞き取ることが出来なかった(白目
コミュニケーションをとるのが絶望的であったが、なんとかいくつか聞き取ることが出来た。どうやら、このおじいさんは御年76歳であり、宗谷岬から佐多岬までを5年間連続でママチャリで往復し続けている猛者らしい。
それだけでも驚きだが、40代の頃はこの距離を45日間で走り切った(なお、自転車ではなくランニングで)のだというのだから、そのタフさに思わず言葉を失った。
よくみると、このおじいさんは70歳にしては背筋が伸びすぎているし、筋肉もついている。とんでもねえじいさんだ……
それについて触れると、おじいさんは昔のことを話してくれた。おじいさんは、昔はとても弱い人間だったらしい。だが、たまたま坂本龍馬の本を読んだときにその強い生きざまに衝撃を受け、自分も強くなろうと身体を鍛えてきたのだという。
人間は、強くなろうと思えばいくらでも強くなれるのだと思った。私も、70歳になっても自転車で走り続けられるように頑張ろうと思った。
おじいさんからは、「男には負けるんじゃないよ!戦いなさいよ!!」「この旅は今後の人生の糧になるから頑張りなさいよ」と言われた。
おじいさんからもらった言葉を胸に、目的地に向かって再び走り始めた。
ひたすら続く海沿いの道を走り続ける。
走っていると、所々で風車を見かけるようになった。留萌を始め、この付近の地域は、風が強いので風力発電が盛んなのだとか。大きな風車が沢山並んでいるのは圧巻だ。
美しい海。
印象的な灯台が目印の「みさき台公園キャンプ場」。
ここをキャンプ地とする!(テントの入り口の向かい側が海沿いになってる。)
バンガロー。海が見渡せる場所にあるので、展望◎
走っていると、何組かのチャリダーやライダーたちとすれ違った。チャリダーの人は手を振ってくれ、ライダーの人たちは「ヤエー」してくれた。
ライダーさんは、チャリダーに「ヤエー」してくれる人としてくれない人がいる。今日は、ヤエーしてくれる人が多くてうれしかった。
道ですれ違うだけだけれど、同じ旅をする仲間として親近感が湧くし、なによりもうれしい。
3回連続でチャリダーさんとライダーさんにヤエーしてもらえたときは、うれしくてニマニマしてしまった。
ごきげんになりながら海沿いをひた走っていると、途中から激しいアップダウンになった。
この辺りは、海岸沿いだから平地なのではないかと期待していたのだけれど、そんなことはなかった。
そういえば、道の駅で出会ったおじいさんもこの辺りからアップダウンが激しくなると言っていたような気がする。
道のりは険しかったが、ホイールが軽いものを使ったおかげか、するすると上れる。道央にいったときも思ったが、このホイールに変えてからほとんどの坂道は苦なく登れるようになった。
ひたすら続くアップダウンをこなすと、本日のキャンプ場である「みさき台公園キャンプ場」に到着した!
キャンプ場につくなり、その規模の大きさに驚く。キャンプ場のある「みさき台公園」は、灯台のある芝生サイトとその一段下にあるオートサイト、一番下の砂浜にある海沿いのサイトの三つのサイトがあり、そのほかにもバンガローや天文台、レストハウス、道の駅、しょさんべつ温泉 岬の湯などが併設されている。食べ物は、レストハウスと道の駅にある売店と食堂などで賄えるし、洗濯も岬の湯内にコインランドリーがあるので困らない。公園内ですべてが完結する、夢のような場所だった。
そして、一番驚くべきは、このキャンプ場が無料で利用できるということ。
有料キャンプ場であっても、これほどの規模と利便性を兼ね備える場所はそうないのに、それで無料だというのだからすごい。どうやって運営しているのか気になるところだ。
そして、規模や利便性よりも特筆すべきは、このキャンプ場の展望だ。海沿いに位置するこのキャンプ場からは、広大な海とどこまでも続く水平線、そして、遠方に聳える利尻富士を眺めることが出来る。
す、すげえ……これが無料キャンプ場か……!!
〇ィズニーランドに初めて来た子供みたいに目を輝かせていた私だったが、ここに滞在するべきか少し迷っていた。
というのも、明日と明後日の天気が崩れるという予報が出ていたからだ。明日は午前中曇りでそのあとずっと雨だし、明後日は一日中雨だった。
この天気だと、明日中には稚内まで走っていた方がいい気がする。そうすると、今日のうちに明日滞在する予定だった鏡沼海浜キャンプ場まで走っていた方がいいかもしれない。
鏡沼キャンプ場は、ここから38km先にある。そして、現在の時刻は午後の12時になったばかり。今から走り始めれば、私の足でも17時頃にはたどりつく。
ただ、この先も激しいアップダウンが続くことが予想される。足は走れないほど疲労していないが、走り始めて1日目であることや今後のことを考えると、無理をさせない方がいい気がする。というのも、前に膝を壊した四国旅では、初日から飛ばしすぎて膝を悪くした可能性があるからだ。
前回の道央旅でも、アップダウンのある道で膝に違和感を感じたし、膝のことを考えるとここで留まった方がいいかもしれない。
いろいろとぐるぐる考えていたが、ひとまず、お昼ご飯を食べることにした。空腹の状態で考えるのはよくない。ひとまず、レストハウスに向かうことにした。
ふぐだし塩ラーメン。
ラーメンは、いい具合に塩っけがあっておいしかった。走っていて失われた塩分が身体に染み渡る……!
お昼ご飯を食べてほっとしていると、急に足が重たくなってきた。どうやら、自分が考えていたよりも足の疲労が大きいらしい。今日の走行距離はそこまでではないのだけれど、初日は走り慣れていないので、こういうことがたまにある。
足に負担がかかりすぎるのはよくないため、鏡沼海浜キャンプ場まで走るのは諦め、ここに留まることにした。
そうと決まれば、テントを張りにキャンプ場へと向かう。
キャンプサイトは3つあるが、芝生サイトと海沿いのサイトは親子連れが多い様子。夜に賑やかになる可能性があったので、比較的一人旅の人が多いオートサイトの方にテントを張ることにした。
海沿い且つ端の静かそうなところにテントを張る。テントを張ってから気づいたが、丁度、利尻富士を眺められる好立地だった。
テントを張った後は、すこし散策へ。子供のようにはしゃぎながら、カメラを片手に走り出す。
海へと向かう道っていいよね。
オートサイトとその展望。どこからでも海が見える。
海沿いのキャンプサイトへと向かう道。小高いところから海を見渡せて良い……!
オートサイトの付近にある木製の階段を下って砂浜のサイトへ行くと、鳥居があった。
鳥居をよく見ると、金毘羅神社と書いてあった。はて、この名前はどこかで見たことがある気がする。
気になって、看板に書いてあった説明を読むと、ここは四国の金刀比羅神社(金毘羅神社に同じ)と縁のある場所なのだそうだ。なるほど、四国に行ったときに名前を聞いたことがあったから既視感があったわけだ。
その昔、四国の金刀比羅神社のお札がこのあたりに流れ着いたことがあったそうだ。それを何度送り返しても、不思議と再びここに流れついてきた。そこで、昔の人はお札とこの地に何か縁があるのではないかと考え、祠にまつり始めたのだとかなんとか。(なお、同様の経緯で全国各地に金刀比羅神社および金毘羅神社があるのだそう。おもしろい)。
祠は、海風で削られ風化した岩壁にあり、風情があった。その祠の丁度前になるところには、海に聳える鳥居があってこれもまた風情がある。わびさび。
散策後は、温泉へと向かう。昨日は付近に銭湯がなく風呂に入ってなかったので、身体中がべたついていた。早くひとっぷろ浴びたい。
しょさんべつ温泉 岬の湯で受付を済ませ、浴室へ向かう。
身体を洗い、いざ湯船へ……!
まずは、内湯で温まる。丁度いい温度のお湯が凝り固まった身体をほぐしていく。心地いい……
浴室と露天風呂は、日本海と利尻富士を一望することができる。最高すぎる展望に、テンションがあがる。
今日は晴れていたけれど、遠方に見える利尻富士は霞がかっていてシルエットでしかみることができなかった。条件によっては、くっきりとした利尻富士をみることができるらしいが、今日はそうではないらしい。日本海にシルエットで浮かび上がる利尻富士は、マボロシ島感があってこれはこれでよかった。
日本海と利尻富士を楽しんでから、風呂を後にする。
フルーツ牛乳が染みる……!!
風呂上り後は、休憩室でフルーツ牛乳を飲んだり柔軟をしたりして過ごす。特に、柔軟は念入りに行い、股関節と大殿筋を中心にほぐす。凝り固まっていた筋が伸びて気持ちが良い……!
しばらく休憩室でゴロゴロしてから、テントへと戻る。
テントに戻ると、私のテントの近くにテントが増えていた。装備を見るに、ソロのチャリダーさんとライダーさんっぽい感じだった。
テントに入ってゴロゴロしたり、公園内を再び散策しながら過ごした。
今日は、気持ちいいほど空が晴れていて、お散歩が捗った。
ぶらぶらしたりゴロゴロしたりしていたら、気づいたら日が傾いていた。
空が茜色に染まっていく。今日は、昨日とは違って水平線上にほとんど雲がなかった。これは、良い夕日が撮れるかもしれない……!
カメラをもって砂浜に向かって駆けていく。絶景を撮るぞ……!!
砂浜のサイトに着くと、カメラを手にした人たちが集結していた。どうやら、フォトジェニックな光景をカメラに収めようとしているのは私だけではなかったようだ。
特に、夕日と鳥居が一緒に映る場所には、大勢の人がかたまっていた。その人たちに混ざり、私も夢中で夕日を撮る。
夕日の写真を収めてほくほくしながら自分のテントへと戻る。
テントのあるオートサイトの方から、海を眺めると……
うおおおおおおおおおおおお!!!
夕焼けをバッグに輝く利尻富士を見つけて、思わず叫ぶ。
オレンジのグラデーションの中に佇む利尻富士は、思わず見惚れてしまうほど美しかった。
利尻富士に見惚れていると、私のテントの近くにテントを張っていたARAYAのランドナーに乗っている大学生の男の子に声をかけられた。
話を聞くと、彼は去年の2か月の夏休みを使って自転車で日本一周をした「日本一周勢」のようだった。大抵、日本一周は半年以上かけて行われるので、2か月というのは異例の速さだと思う。
今回の夏休みでは、北海道一周にチャレンジしているらしい。本当は海外に行く予定だったらしいが、このご時世で断念したのだという。
色々話していると、彼の夢が私と同じ「世界一周」であることが分かってテンションがあがる。彼曰く、知らないところに行くのが好きで、見たことのない景色をみるのに飽きないから旅を続けているのだとか。そういうところも私と同じで、親近感が湧いた。旅人というのは、根っこの部分ではみんな同じなのかもしれない。
旅をしていると、心の根っこの部分で共感できる人たちに沢山出会えるような気がする。そういうのも含めて、旅での出会いというのは貴重だなと思う。
しばらく話した後、テントに戻る。
寝転びながらテントの窓から顔を出すと、目の前には満点の星空が広がっていた。
昨日、留萌でみたものよりもさらに美しい星空だった。そういえば、この辺りは星空が綺麗なことで有名なのだと、誰かから聞いたような気がする。
宝石箱のような星空を眺めていると、胸の中が幸せで満ち溢れてくる。特に、最近になって「恋する小惑星(通称:恋アス」という地学部のアニメにはまって、天体に興味を持つようになっていたので、なおさらうれしい気分になる。
満点の星空を眺めていると、ふと眠気が襲ってきた。
明日もあるから、そろそろ寝よう。
寝袋に潜り込んで、目を閉る。久々に走ったのもあって疲れていたのか、すぐに微睡の中に落ちていった。
スヤァ……
3日目へと続く。
0 件のコメント:
コメントを投稿