道央旅の3日目です。
前回のは、こちらからどうぞ。
夜の小樽運河。
3日目(7/26):倶知安~小樽
ふと、唐突に目が覚めた。お酒を飲んだ次の日は、眠りが浅いのかすぐに目が覚める。
時刻を見ると朝の4時半だった。昨日は、お酒の影響で夜中に何度も目を覚ましたのもあって、少し寝不足気味だった。
二度寝をしようかと思ったけれど、目が冴えてしまって眠れない。仕方なく起きることにした。
テントから出ると、辺りはすっかり明るくなっていた。
トイレと歯磨きをするついでに、少し散歩をすることにする。
このキャンプ場は、場所によっては羊蹄山を一望することができる。展望のいい場所まであるいて、羊蹄山を眺める。
山頂だ……!!
朝の淡い光にあてられて、羊蹄山の山頂が淡く浮かび上がっていた。
昨日、ずっと雲に隠れていた羊蹄山の山頂をようやく見ることが出来たのもあって、うれしさはひとしおだった。最後に見ることが出来てよかった……
羊蹄山を眺めながら歯磨きをする。大自然のなかでのんびりと歯を磨いているこの時間が何気に好きだったりする。
歯を磨き終わってから、出発準備を始める。
本当は、もう少しキャンプ場でゆっくりするつもりだったけれど、駅の時刻表を眺めていたら始発に間に合いそうだったので、それに乗るために急ぐことにした。
撤収準備を終えて駅に着く頃には、ギリギリの時間だった。いけるか……?
焦りながら、輪行の準備をする。エンド金具がうまくはまらず、格闘する。
そんなこんなをしていたら、駅で切符を買っているときに始発の電車が行ってしまった。
次の電車は一時間後だ。別に急いでいるわけではないから別にいいのだけれど、暇になってしまった。
ふと、駅の電光掲示板を見てみると、20分後くらいに札幌行きの電車があった。駅に貼り出されている紙の時刻表に書かれていなかったので、気になって駅員さんに聞いてみると、どうやらこれも小樽へいく電車らしい。
ラッキー!と思って改札を通って乗車位置へ。しばらく待つと電車が来たので、其れに乗り込む。
いざ、小樽へ!
動き出す窓の景色を見ながら、倶知安駅にさよならする。また来るぜ。
電車に揺られながら、まだ見ぬ小樽の風景に思いを馳せた。
小樽は、今回の旅の終着点となるはずの場所だった。新千歳空港から支笏湖やニセコの方面を回って積丹へと出て、小樽へと到着する予定だったからだ。帰りの飛行機が15時発だったのもあり、このルートだと小樽を観光する暇もなく電車に乗り込み、新千歳空港へと向かうことになっていた。
あくまで、旅の終着点という目的でしか訪れない予定だった土地。だけれど、この小樽は北海道の中でもかなり著名な観光名所だ。
小樽は、ニシン漁の拠点や貿易港として発展してきたことで有名な土地だ。特に、貿易港として栄えた明治から大正にかけての建造物が今もなお残っていることで有名であり、近代的な街並みを求めて、多くの観光客が訪れる。
小樽で一番の見所といえば、貿易港で栄えた頃に作られた小樽運河と運河に沿うように建設された倉庫だ。この辺りは夜になるとガス灯が点灯し、ノスタルジックな情景が広がる。
本来であれば、飛行機の都合で夜の小樽運河を見ることはできなかった。だけれど、幸か不幸か、膝の故障で小樽に早く着くことが出来たので、夜の小樽運河を眺めることが出来る……!
ニセコや積丹のほうにいけなかったのは残念だが、小樽を観光できるならそれもまたよし。旅は楽しんだもの勝ちなのだ。
そんなことを考えながら電車に揺られていると、小樽についた。
小樽駅。レンガ風の建物がなかなかイカしてる。
降り立った瞬間、「あ、都会だ」と思った。
札幌ほどではないにしても、それなりに高いビルが立ち並んでいる。今まで、ずっと自然の中を走っていたから、ちょっと新鮮な感じがした。
輪行を解除し、まずは腹ごしらえをしに行くことに。
食べログに紹介されている中においしそうな店があったのでそちらに向かう。
お店近くの市場。狭い路地に市場があるのが秘密基地っぽくて良い。
市場の並ぶ狭い路地に入り、いくつかある店を眺めながら歩いていると、その店についた。
席について、メニューのなかで一番おいしそうだったものを注文する。
しばらくすると、注文していたものがきた。
デデンッ!!
市場食堂 味処たけだのANA特製丼!!
ちなみに、ANAと共同開発した海鮮丼らしい。
おなかがすいていたので、皿まで食うくらいの勢いで噛り付く。
ネタがどれも新鮮でおいしい。サーモンは厚切りだし、ウニはまろやかでおいしい。
ちなみに、お通しで来たこの二つもおいしかった。煮魚は味がしっかり染みていておいしいし、さきいかっぽい奴は噛んだら噛むだけ味が染み出してきておいしかった。(つまりおいしかった)
海鮮丼を堪能した後は、少しだけ市場をぶらぶらする。
やけに長い「八角」という魚。初めて見たかも。
市場なのもあって、スーパーとかに並んでいない珍しいお魚も沢山あった。こういう、よくわからない魚がいるから市場は面白い。
しばらくしてから市場を出る。
宿の時間まで、まだ全然時間があったので、夜の下見もかねて小樽運河に向かうことにした。
自転車を走らせて、海の方へ向かう。
海だーーーー!!
磯の匂いを含んだ風を浴びながら、小樽の海を眺める。
人工的な建造物や船が多くあるせいか、なんとなく横浜とか横須賀とかに近い雰囲気を感じた。港っていうのは、どこもこんな感じなんだろうか。
海沿いを走りつつ、小樽運河の方に移動する。
海岸側の道の隣の道に入る。そうすると、風情のあるガス灯が等間隔に並ぶ運河が見えた。
昼の小樽運河(なお、携帯の写真なので若干画質が粗い)。
小樽は、北海道の中でも都会に分類される場所で、駅や今まで通ってきた道も現代的な活気にあふれていた。だけれど、この小樽運河の付近だけは、そんな活気から離れ、厳かで少し寂しい雰囲気に包まれていた。
道路を一つ挟めば、その先は現代的な街並みが広がっているのもあって、この空間だけ少し異質な感じがした。ここだけ時代に取り残されているような、ぽっかりと穴があいているような、そんな感じ。
少し寂しいような気がするのは、もうこの場所が実質的に稼働していないからかもしれない。
かつて貿易で賑わっていた時は、ここにはどんな空気が流れていただろうか。
今は失われた時代に思いを馳せながら、小樽運河を見つめ続けた。
小樽運河を後にした後は、小樽の建造物を求めて自転車を走らせる。
小樽には、小樽運河以外にも近代的な建造物が多くある。どうせ小樽に来たのだし、それも全部見ておきたかった。
小樽オルゴール堂
ツタの張った建物が良い……
オルゴール堂の蒸気からくり時計
「大きなのっぽの古時計」を歌いたくなるような、アンティークな時計。
こちらもなかなかいい雰囲気で良い。
LeTAO本店
ドゥーブルフロマージュを始めとした洋菓子の人気店であるLeTAOの本店も、なかなかおシャレな外観。シルバニアファミリーのお家とかに使われそうな配色をしている。かわいい。
北一硝子三号館
北一硝子は小樽内に数店舗あるけれど、中でも、この三号館は明治中期に建造された木造石張り倉庫を再利用しているのだとか。
明治中期に建てられたのもあって、ところどころ劣化しているところもあるけれど、綺麗に手入れされている印象。古き良き建物って感じ。
自転車を停めて中を見て回る。
硝子のカップやランプなどがずらりと並んでおり、見ているだけで楽しかった。
北一硝子を出て、再び、小樽内を探索する。
小樽の街並み。この通りは、お菓子屋さんとガラス屋さんがやけに多かった。
大正硝子館。色とりどりの硝子細工が置いてあり、見ているだけで楽しい。
六花亭。バターサンドとかがおいしいお店。
小樽の街並みを堪能してから、再びLeTAO本店に向かう。
というのも、フォロワーさんから「LeTAOのドゥーブルフロマージュは、めっちゃおいしいからおすすめ!」と言われたからだ。これは是非とも食べねば……!
適当なところに自転車を停め、店内へ。
LeTAO本店は、1階に販売コーナー、2階にカフェという構成になっていた(なお、外観だけじゃなく、内装もめちゃくちゃおしゃれだった)。
迷うことなく2階へと向かう。
店員さんに案内されるままにテーブル席につき、注文を済ませる。
しばらく待っていると、それは来た。
奇跡のくちどけセット!ドゥーブルフロマージュと生ヴェネチアランデブーを堪能できる。
まず、ドゥーブルフロマージュからいただく。滑らかなくちどけとコクのあるチーズの味わいが口いっぱいに広がる。幸せ……
生ヴェネチアランデブーは、ねっとりとした食感で、これもまた濃厚な味わいが口の中に一杯に広がる。
なるほど、確かにこれは奇跡のくちどけセットと名付けられるだけあるなあ。
そんなことを考えながら紅茶を口に含むと、香りが口いっぱいに広がって幸せな気分になった。
絶品のケーキと紅茶を堪能してから、店を出て、次なるグルメを求めて自転車を走らせる。
小樽運河の近隣にある「出抜小路」と名付けられた店の立ち並ぶ場所に、目的地はあった。
サンタのヒゲ!今回は、Mサイズを注文。
半分に割られたメロンにソフトクリームが乗った豪快な一品。
まずは、ソフトクリームを口に含む。冷たさと濃厚ながらしつこすぎないバランスのいい味が口いっぱいに広がる。うまい……!
下のメロンと一緒に食べると、メロンの甘さとアイスの滑らかな味わいが口いっぱいに広がる。予想していたよりもメロンとアイスがマッチしていて驚いた。
アイスにしてはかなり大きな部類だったので、途中で飽きると思っていたのだけれど、食べる手が止まらず、あっという間に食べ終えてしまった。ごちそうさまです。
ちなみに、この店のある「出抜小路」は、近代的な建物を模しており、見ているだけで楽しい。小路が少し秘密基地っぽい雰囲気を出しているのも良い感じ。
出抜小路の一部。隠れ家っぽくて良い。
一通り、行きたい場所を巡り終わって時計を見ると、まだ12時半。
宿のチェックインが15時なのもあり、時間を持て余している状態だ。
せっかく来たのだし、いろいろな場所にいこうと思って携帯のマップを開いて、よさそうな場所を探すと、市街地のはずれに公園があった。
一休みするために、とりあえず、公園に向かうことに。
小樽市街地を出ると、すぐに坂に差し掛かった。
小樽は、北海道の中でもえぐい坂が多いことで有名な場所だ。出会ってきた自転車乗り達は「小樽はやべえ……」と口々に言っていた。
今まで出会ってきた自転車乗り達の言う通り、小樽の坂は激坂中の激坂だった。
北海道の坂は、ゆるく長い傾向にあるけれど、小樽の坂は、本州の激坂が北海道サイズに拡大されたかような感じだった。とりあえず、要約するとやべえ。
途中で、自転車を降りて押したけれど、押しているだけでもきつかった。
そして、なによりもピンチなことがあった。
今、猛烈にトイレに行きたい。
様々なおいしいものを食べてきた弊害が、ここにきて出てきた。
自転車をずっと押して歩いているから少ししか進まない上に、途中で休憩しないと足が持たないので休み休み歩く。けれど、それがとてつもなくもどかしい。もどかしすぎて叫びそうだった。
幸い、今向かっている公園は大きな公園なので、上に上れさえすればトイレはある。
トイレ……!早くトイレ……!!
心の中で絶叫しながら、頂上のトイレを目指す。
頂上にようやくつくと、目指していたオアシス(トイレ)が目と鼻の先に見えた。
その瞬間、私は自転車に鍵をかけて走り出した。
トイレに駆け込み、ドアを閉めて座ろうとした、その時。
紙がねえ……!!
ほかの個室も調べたが、すべてトイレットペーパーがない。
額に脂汗をかきつつ、少し離れたところにある二つ目のトイレを目指すが、そこもトイレの紙がない。どういうことだよ……!?
トイレットペーパーを求めて更なるトイレを求める時間はもうなかった。
最後の望みをかけて、せめてなにか持っていないかと服のあらゆるポケットに手を突っ込むと、なにかよくわからない紙が出てきた。ああ、もうこれでいいわ。
ある種のあきらめと共に座る。そして、開放された。
呪縛から解放されてトイレを出ると、目の前の景色がやけに晴れやかに見えた。
とりあえず、もし私がなにかしらの縁で公園の管理人になったときは、必ずトイレの紙を切らさぬようにしようと心に誓った。
そんなくだらない茶番をしていたら、宿のチェックインの時間に近づいてきたので、公園を後にする。
今まで上ってきた坂道を下ろうとした、その時。目の前にこんな景色が見えた。
眼下に小樽の街並みが広がっているのを見て、一瞬だけ呼吸を忘れた。
今までは、必死に上ってきたから気づいていなかったけれど、大分高いところまで上っていたようだ。
そして、目の前に広がる坂道にぞっとした。目の前の下り坂は、乗って下ったら頭から落ちるのではないかと思うほどの急こう配だった。こんなの、一度転んだら最後、下にたどり着くまで転がり続けてしまいそうだ。
早々に、自転車に乗って下ることを諦め、自転車のブレーキをかけながらゆっくりと下っていく。
市街地に戻ってからは、小樽の街を巡ったりスーパーで涼みながら時間をつぶす。
それにしても、7月後半だというのにやけに暑かった。このくらいの時期であれば、北海道は涼しいはずなのだけれど、市街地は例外と言わんばかりの暑さだ(というか、道央が暑いのかもしれない)。
宿のチェックイン時間になったので、宿に向かう。
大通りから商店街のような小道を通って少し走ると、今日の宿である民宿にたどり着く。
宿につくと、おかみさんが出迎えてくれた。玄関に自転車を置いていいとのことだったので、玄関の中に自転車を入れる。こういうところで融通が利きやすいのが民宿のいいところだと思う。
料金を支払いつつ、おかみさんと雑談する。おかみさんはとても気さくな人で、すぐになじむことが出来た。
ここの民宿は、おかみさんと90過ぎのおかみさんのお母さんとで切り盛りしている宿なのだそうだ。ソファーで横になっているお母さんにも挨拶をする。
お母さん「ところで、あんたは男なのかい?女なのかい?」
私「(白目」
おかみさん「こら!なんて失礼なこというの!ごめんなさいね」
そんなやりとりをしつつ、二階の部屋に通される。
部屋は、四畳半くらいの和室に布団が一式とテレビが一台というシンプルな構造。民宿といればこれって感じの部屋だった。
荷物を下ろして、大の字になって寝転ぶ。焼けた畳の匂いが鼻をかすめる。
ああ、これだ。これがいいんだ。
古い民宿特有の、飾らない素朴さが好きだと思った。ここだけは、現代の忙しさと無縁であり、ゆったりと時が流れているような気がする。
しばし、目を閉じて焼けた畳の匂いと窓から吹く風、窓から入ってくる街の音だけを感じる。
しばらくしてから、一階に降りるために部屋を出た。
二階の他の部屋は、泊まりで小樽に働きに来ている業者さん達が泊まっているようだった。
業者さんの泊まっている部屋の扉が開けられており、その中からたばこのにおいと焼けた畳のにおいが混ざった空気が漂ってきた。その匂いが鼻をかすめた時に、初めて来る場所なのにやけに懐かしい気持ちになった。
一階に行くと、おかみさんから「お風呂もうすぐ湧くけどどうする?」と聞かれたので、入ることにした。ついでに、洗濯機も貸してもらえるようだったので、お言葉に甘えて洗濯させてもらうことにする。
旅に出ていると、コインランドリーで洗濯するだけで莫大な金がかかるので、洗濯させてもらえるのはありがたかった。こういうところで融通が利くのが民宿のいいところだと思う(二回目
風呂から上がって洗濯物を回収する頃には、すっかり日が傾いていた。
身体も綺麗になったし、飯と酒と夜の小樽運河を求めて外に行くことにした。
おかみさんに21時頃戻ると伝えて外に出ると、昼間の熱気が残った風が頬をかすめた。本土は、まだ梅雨が続いているというのに、こっちはすっかり夏の空気だった。
晩飯を食べる前に、まずは小樽運河へと向かう。
夜の小樽運河
夜闇の中の小樽運河は、ガス灯の光を受けて幻想的に輝いていた。
その付近を歩きながら、何枚か写真を撮った(結局、三脚も明るいレンズもなかったからうまく撮れなかったけれど……)。
それにしても、昼間と夜では全く異なる印象を抱く。昼間感じた哀愁は夜闇に紛れ、そこにはノスタルジィな空間だけが広がっていた。
一通り写真を撮ってから、晩飯を食べに向かう。
函太郎の回転ずし。
回転ずしと聞くと、一般的にしょぼい印象を受けるけれど、小樽の回転ずしは絶品で有名なのだとか。
とりあえず、サーモンとしめさばと適当なものを頼むと、カウンターの目の前で握ってくれた。これって回転ずしじゃなくないか?
とりあえず、サーモンを一口食べる。
う、うまい……!!
サーモンは肉厚で、回転ずしで出てくるものだと思えなかった。しめさばも、しっとりとしておいしく、こちらも回転ずしだと思えない一品。
あっとう間に皿が空になる。
そのあとも、何品か注文する。そのどれもが新鮮・肉厚でおいしかった。
小樽で回転ずしが人気だと聞いたときは驚いたが、確かに食べる価値のある一品だった。
寿司でおなかを膨らませた後は、酒を求めて小樽運河沿いの店へと向かう。
小樽運河の倉庫の立ち並ぶエリアは、小樽ビールを売りにした飲み屋で溢れている。私の目的地は、その立ち並んでいる店の中にあった。
店内に入ると、目の前にこんな光景が飛び込んでくる。
小樽倉庫No.1の店内
う、うおおおおお!
ドイツの酒場のような雰囲気にテンションが上がる。
カウンターの内側にある仕込み釜は飾りではなく稼働しており、ビールの仕込みをしているのだとか。すげえ。
ちなみにこの店は、ビールだけでなくソーセージなども生産しており、店内で自家製ソーセージを味わえるらしい。すげえ(二度目
一杯目に頼んだピルスナー。Mサイズで注文。
一杯目は、すっきりとした味わいのピルスナーをば。
ホップの爽やかな香りが口いっぱいに広がる。うまい!
自家製ソーセージの盛り合わせ。自家製なだけあって、3種類ともこだわり抜いたおいしさを感じる。
そして、酒のアテは自家製ソーセージ!
自家製と聞くとどうしても食べたくなってしまうから頼んだが、これがまたうまい!
まずは、一番上の白色で太いソーセージをかじる。このソーセージは内部が柔らかく、滑らかな口当たりをしていた。食感は、ソーセージというよりもおからなどに近いだろうか。とにかく、ソーセージではなく別の食べ物を食べているみたいだった。
次に、真ん中のソーセージをかじると、パリッとした皮の中からジューシーな肉汁が口の中に広がる。先ほどのような変わり種とは違い、一般的に知られるシンプルなソーセージだった。王道だからこそ、こだわりで勝負しているのだろう。純粋においしい。
最後に、一番下のソーセージをかじる。かじった瞬間にハーブとスパイスの香りが口の中を駆け抜けていく。香辛料が肉の臭みをうまい具合に消し、癖のない味わいをしていた。香辛料と肉汁の塩梅が良く、個人的に一番これがおいしいと感じた。
ソーセージを頬張りながら、ビールを流し込む……
ああ、幸せ……
気づいたらビールがなくなっていたので、二杯目を注文。
二杯目に頼んだドンケル。Sサイズで注文。
とりあえず、一口飲んでみる。
ピルスナーがすっきりとした味わいだったのに対し、ドンケルは、キャラメルに似た香りが口いっぱいに広がった後にコクと甘みを感じる、そんな味わいだった。
ピルスナーのすっきり感もいいけれど、ドンケルのコクの深い味わいもなかなか良い。というか、個人的にピルスナーよりもドンケルの方が好みかもしれない。
今回はSサイズを頼んだので、すぐに飲み終わってしまった。Mサイズを頼んだほうがよかったかもしれない。
ビールを2杯飲んで気分が良くなってきたが、お財布の事情なども相まって、ここで店を後にすることにした。
小樽運河のあたりを少し歩いて酔いを醒ましてから、宿へと戻る。
宿に戻ると、おかみさんがお母さんを寝室まで連れていって寝かしつけてきたところだった。
おかみさんに戻ったことを伝えた後、なりゆきで雑談をした。
この宿のことや、これまで来たお客さんのこと。北海道のこと、私のこれまでの旅の話などをずっと話していた。
これまでの旅の話をしているときに、倶知安の話になった。おかみさんによると、最近の倶知安は、外国人が多く移住してきている影響で、ほとんど外国人の街と化しているのだそうだ。やけに建物が新しいと思ったけれど、それは、移住してきた人たちが新しく家を建てているからなのだとか。
なお、移住してきた外国人はコロナウイルスの影響で帰国しており、あまり人がいないとも言っていた。外国人が多く住んでいる割に、街中で見かけることが無かったのはそういう理由らしい。
おかみさんがきさくで優しいのもあって、やけに会話が弾んだ。ふと、時計をみると22時頃を示していた。思っていた以上に話し込んでしまっていたらしい。そろそろ、寝なければならない。
おかみさんに「おやすみなさい」と言って、二階の部屋に戻る。
畳に寝転んで目を閉じると、身体が沈み込んでいくような感覚がした。そろそろ寝たほうがいいかもしれない。
明日は、札幌で食道楽をするだけだから早起きしなくてもいいのだけれど、これまでの旅で早起きに慣れてしまった身体は、睡眠を欲していた。
歯磨きをしてから布団に潜り込む。
明日は、札幌で食道楽をしてから帰る予定だ。札幌のおいしい食べ物達に思いを馳せながら、眠りにつく。
スヤァ……
4日目に続く
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