道東旅の続きです。前半はこちらからどうぞ。
オンネトーと愛車。
天気予報によると、今日も時々雨が降るようでした。ただし、昨日よりも走行距離が少ないので、今日はそこまで焦ることもなさそうです。
朝食代わりのカロリーメイトを食べてから、撤収の準備を始めます。
荷物はバスタオルやタオルを下に敷いていたおかげで無事だったのだけれど、テントの下は東屋の水はけが悪いのもあって、水が溜まってずぶ濡れになっていました。特に、テントの下に敷いていたグラウンドシートは床の面に張り付いてしまっていて、しまうのが大変でした。
私の使っているテントのマイティドームは、全体がゴアテックスでできていて、雨などの悪天候時でも野営できる優れものなのだけれど、いかにゴアテックスとはいえ、底面の水ははじいてくれないようです(それでも、底面以外からの浸水はなかったので、シングルウォールテントとしては十分すぎる性能だと思います)。
今後は何かしらの対策が必要だなあ、と思いながら、濡れて重くなったテントをしまっていきます。
荷物を自転車に取り付けて、キャンプ場を後にします。
まずは、昨日雨で見られなかった阿寒湖へ向かうことに。
どうせだから、観光がてらにアイヌコタンのほうを通っていくことにします。
アイヌコタンの入り口
アイヌコタンの街並み。独特な街並みをしている。
アイヌコタンは、現在でもアイヌの人々が暮らしている場所なのだとか。
それもあって、このエリアには独特な空気が流れていているような気がする。
アイヌコタンでは、アイヌの人たちが作ったアクセサリーなどのお土産が買えるのだけれど、今は早朝なのもあって店は開いていませんでした。
アイヌコタンの独特な街並みを抜けると、阿寒湖がすぐに見えてきます。
早朝の阿寒湖。
うーん、微妙!
今日の阿寒湖は、雲のせいで辺り一面を暗くしているのもあって、そこまで綺麗ではありませんでした。
ただ、周りを緑に囲まれた阿寒湖は雄大で、晴天だったらさぞかし綺麗だっただろうと思いました。
少しの間だけ阿寒湖をぼーっと眺めた後、次の目的地へ向かうことにします。
次に向かうのは、道東のなかでも屈指の絶景を誇るオンネトーです。
津別へいく道からは少し外れてしまうけれど、道東に行ったら必ず立ち寄ろうと決めていた場所だったので、少し寄り道します。
オンネトーの方へと向かう道を走っていると、両脇が森のような道に差し掛かります。
オンネトーの途中の道。ゆるい上り坂が続く。
オンネトーへの道は、勾配がそこそこの長い上り坂が続いていました。
あまりにも長すぎて、度々足を付きながら上っていきました。
昨日もそうだったけれど、道東はそこそこの上り坂が長く続いている場所が多い気がします。そういう地形なんだろうか……
なんにせよ、持久戦が苦手な私にとって、そこそこの上りが長く続く状況はしんどかったです。
オンネトーへ行く道の端にあったフキ。
オンネトーへいくまでの道の端っこには、立派なフキが沢山生えていました。巨大なフキが花畑のように道路脇に広がっているのを見て、ここが北海道であることを改めて実感します。どうでもいいけど、北海道でフキって聞くとシャー〇ンキングを思い出してしまう。
道路脇のフキを眺めながら、えっちらおっちら上っていると、森の奥から何かが動くような物音がしました。
思わず目を向けると、そこには死ぬほどでかいエゾシカが佇んでいました。
昨日もキャンプ場でもエゾシカを見たけれど、明るい場所で見ているからか、それとも昨日よりも近くで見ているからか、昨日みたものよりも格段に大きく感じました。
エゾシカはしばらく私のことを見つめた後、森の中へと消えていきました。地面を蹴る後ろ足の筋肉は美しく波打っていて、その筋肉美に思わず見惚れてしまう。
これが、試される大地に生きる生き物か……
北海道の厳しい気候に生きる生き物のたくましさと美しさを垣間見た瞬間でした。
エゾシカの筋肉美に感動しつつ、オンネトーへの道をひたすら突き進む。
たまに、携帯で時間を確認していたのだけれど、ふと見てみると、携帯の左上に「圏外」の二文字が表示されているのに気づきます。ついに電波が届かなくなったか……
昼間からエゾシカがでるような森の中なのだから、電波が届かなくなるのも当然かと納得する。
とりあえず、グーグルマップは使えるようだったので、マップを頼りにオンネトーへと向かいます。といっても、オンネトーへの道はほぼ一本道で迷うことはないのだけれど……
上りにばてて、自転車を引いて歩きながらオンネトーを目指します。上り坂は、途方に暮れるほどずっと続いていて、上りが苦手な私には地獄のような道のりでした。
自転車を引きながら、車も通らないような道を上っていきます。森からは、木々を揺らす風の音や鳥の鳴き声が聞こえきて気持ちいい。ちょっとしたハイキングみたいです。
ひたすらの上りのなかでも、たまに下りがあるときがあったので、その時は自転車に乗ります。
ただ、その時にトラブルが発生。
フロントの変速ができない(白目
フロントをインナーからアウターに変速しようとしても、アウターのほうにチェーンがかからなくなってしまいました。
このトラブルは、前に美瑛・富良野に行った時も起こったことがありました。原因は、フロントバッグがワイヤーを圧迫して干渉してしまっているから。
だから、フロントバッグを持ち上げるなりして、ワイヤーへの干渉を避けると変速できる場合が多いのだけれど、今回はそれでもうんともすんともいいません。
結局、チェーンを手でいじって無理やりアウターにはめて変速します。完全に力業。
そんなこんなで何もない森の中を走っていたら、建物のある場所が見えてきました。どうやら、温泉宿のようです。
温泉宿の周りには、硫黄のようなにおいが立ち込めていました。
温泉宿の周りに流れていた白い液体。
建物の周りには、白く濁った液体が川のように流れていました。最初は汚い川だと思っていたのだけれど、よく見ると川からは湯気のようなものが立ち込めていました。手をかざすと少し温かい。
これ、温泉だ……!!
しかも、バリバリの源泉。こんな風に源泉が自然に流れている所は初めて見たので、少しテンションが上がる。
一昨日の和琴温泉もそうだけれど、北海道は厳選かけ流しのところが多い印象にあります。そんなに温泉が沢山ある地形なんだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、温泉宿の近くにトイレを発見しました。少しここで休憩することにします。
自動販売機もあったので、水を補給していくことにします。水がほとんどなくなっていたので、ここで補給できるのはありがたい。
それにしても、道東は補給場所が本当にない(n度目
どんなに人手のない場所でも、自動販売機の一つや二つあるものなのだけれど、道東エリアはそれすらない状況。
今は、雨が降ったのもあって涼しいから何とかなっているけれど、暑い日とかはどうしているのだろう。あんまり考えたくないなあ……(白目
北海道は「試される大地」という異名を持っているけれど、道東では特にその色が濃いような気がしました。
休憩をした後は、再びオンネトーを目指して走ります。
温泉宿を過ぎると、長い下りにさしかかります。
いままで、死ぬほど長い上りをこなしていた身としては、天国のような状況です。ヒャッホーーー!!
もしやこのままオンネトーへと向かえるのではないかと思っていたのだけれど、そうは問屋が許さない。
長い下りの先には、再び長い上りがお出迎えしていて、思わず白目を剥く。また上るのかー
疲労した足で、何とか上りをこなしていきます。果てしなく続くのではないかと思うような上りを超えると、ついにオンネトーに到着します。
オンネトーに到着したときの写真。
適当な場所に自転車を置いて、オンネトーが良く見える場所まで移動します。
湖の淵の近くまで移動し、目の前に佇むオンネトーを見たとき、一瞬呼吸を忘れた。
オンネトー。
目の前には、綺麗な碧をした湖が佇んでいました。透き通った湖面には、湖を取り囲む針葉樹が移りこんでいて、それがまた幻想的な雰囲気を醸し出していた。
空は相変わらず鈍色をしていたけれど、そんなことは関係ないように、オンネトーは美しかった。
しばらく、その美しい碧に見惚れてしまって、そこから離れることが出来ませんでした。
目の前の感動をなんとか写真に残したくて、一眼を取り出す。北海道に来てから、撮影時にずっとエラーを吐き出して撮影できないカメラだけど、それでもどうかここだけでも……!
頼む!この景色だけでいいから撮れてくれ…!!
祈りと共にカメラのシャッターを切る。
すると、その思いにこたえてくれたのか、軽快なシャッター音とともに、目の前の景色が切り取られた。
バリアングルモニターで確認すると、そこには目の前にある美しいオンネトーが映っていました。
か、カメラ……!!
「ありがとうカメラ……!ありがとう……!!」と、カメラにひたすら感謝する。
この景色が撮れただけでも、北海道に来た意味があった……!
一通り撮影し終えてから、オンネトーを望める別の場所に行ってみることにしました。
オンネトーは、見る場所によって色が変わると言われているので、別の場所でどう見えるのか見てみたかったのです。
自転車を少し走らせて、次の場所に向かいます。
オンネトーの見える地点にたどり着くと、先ほどよりも開けた景色が目の前に広がっていました。
別の地点からみたオンネトー
湖の周りに広大な針葉樹林が広がっていて、先ほどよりも雄大な印象。
先ほどみた場所でみたオンネトーは「秘境にかくれて佇んでいる湖」っぽかったのだけれど、こっちは「雄大な湖」って感じ。随分印象が違う。
先ほど見た場所でのオンネトーは美しい碧に輝いていたけれど、こちらは若干紫っぽい色をしているような気がします。
先ほどとは違う良さに、心をばっちり奪われてしまっていて、再び目の前の景色に没頭してしまう。
曇天でも美しいのだから、晴れたらもっと綺麗なんだろうな……なんて思いながら、オンネトーを眺めていた。
この地点には、オンネトーにせり出すようにテラスのような場所があったので、そこで愛車を撮影することに。
オンネトーと愛車。
オンネトーと愛車のツーショットに、ひそかにテンションが上がってしまう私。
このときにも、エラーなく一眼で写真を撮ることができました。
オンネトーに来てから、一眼で普通に撮影できていることに驚きます。もしや、これはオンネトーの力なんだろうか……?
あまりに神秘的な場所だから、そんなことすら考えてしまう。
オンネトーがあまりに絶景だったから離れがたかったのだけれど、今日の目的地である津別まで走らなければならなかったので出発します。雨がいつ降るかもわからないし、早めに行動しておく方がいい。
今度は、天気がいいときにまた来よう。
そんなことを思いながら、オンネトーを後にします。
先ほど上ってきた場所を下り、下ってきた場所を死んだ顔で上っていく。
温泉宿のあったところまで戻ると、いままで苦しめてきた果てしない上りが、今度は最強の味方として目の前に君臨していました。
下り坂をジェットコースターのように飛ばして走っていきます。いままで上ってきた地獄を一気に下っていくこの爽快さよ……
これもあって、上りはやめられないと思う。
ごきげんになりながら飛ばしていると、ぱっとしない天気だった空がみるみる青空になっていきます。それをみて、さらにテンションが上がる。最高だぜ……!
目的地である津別を目指して、下り坂をひたすら飛ばした。
オンネトーから戻るときに撮った写真。心なしか、天気も良くなってきていてテンションがあがる。
オンネトーと津別へ行く道の分岐点まで戻ってきて、今度は津別の方に向かって走ります。
この辺りもひたすら下りで、すいすいと走っていく。今までの地獄が嘘みたいに楽ちんでした。
広い大地をすいすいと走ってく感じが面白くて、思わず鼻歌を歌いながら走る。
津別まで、あと34km!
夏って感じの雲。
ひたすら下っていると、目の前に「道の駅 あいおい」が見えてきたので、ここでお昼を食べることにしました。
道の駅あいおい。ここでは、「クマヤキ」というたい焼きみたいな食べ物が人気なのだとか。
この「道の駅 あいおい」では、クマヤキというクマの型で作ったたい焼きのような食べ物が人気なことで知られています。
それもあって、道の駅内にはクマヤキ関連のグッズがぎっしりならんでいました。
それらを横目に見つつ、道の駅の中にある蕎麦屋へと向かいます。
鴨南蛮そば!
鴨はしっとり、ネギはシャキシャキ具合を失わない程度に汁に浸っていておいしい。
少ししょっぱい汁が、塩分の抜けた身体に染み渡っていく……
夢中で食べていると、いつのまにかなくなっていました。正直、もう一杯食べたいくらいおいしかった。
腹ごしらえを終えたあとは一旦外に出て、ここの一番の目玉である「クマヤキ」の売店へ。
クマヤキの売店には、平日なのにまばらに人がいました。
メニューには、定番のあんこやカスタードのほかに、カスタードとタピオカ入りのものもありました。地味に流行にのっとっている……!
私は、無難にあんこを注文します。受取所で受け取ったほくほくのクマヤキにかじりつく。
道の駅あいおいで買ったクマヤキ。ほんのり温かい。
クマヤキは、外はたい焼きと同じようにふわっとしており、その中にあんこがぎっしりと詰まっていました。
一口かじるごとに、あんこの優しい甘さが口の中いっぱいに広がっていって、幸せな気分になります。
う、うめえ……
クマヤキのおいしさをかみしめながら食べていたら、気づいたらなくなっていました。
もう一個食べようかなと思ったけれど、鴨南蛮そばを食べたあとなのもあって、胃が重いのでやめておくことにする。本当は、タピオカ味とかも気になってたんだけど仕方ない。
食後にベンチでぼーっとしながらスマホの時計を見ると、まだ13時を過ぎたところでした。
道を見たところ、しばらく下りが続くようなので、焦る必要もなさそうです。雨も、この天気ならきっと降らない気がします。
もう少しゆっくりしていくことにしよう……
そんなことを考えながら、道の駅内にある物販店を物色することに。
物販店では、クマヤキTシャツやクマヤキ缶バッチなどが売られていました。
クマヤキのロゴのデザインが好きなのもあって、Tシャツや缶バッチを思わず手に取ってしまう。
この絶妙なデザインセンスが私の心をくすぐる。
ほしい……!
けれど、テントの床面の浸水を防ぐためのタオル類などを積んでいるのもあって、自転車に着けている各バッグの積載容量はすでに限界を迎えていました。郵送という手もあるけれど、送料を考えるとコスパが悪い。
5秒くらい悩んだ末、Tシャツと缶バッチを手にレジへ走り出す。迷った時は買うしかねえ……!
早速、買った缶バッチをカメラバッグにつける。Tシャツの方は、タオル類と一緒にサドルバッグの紐に括り付けることにしました。
買い物も終わったので、そろそろ出発することに。
道の駅あいおいを出て、津別方面に向かって走ります。
津別方面は相変わらず長い下りが続いていて、漕がなくてもすいすいと進んでいきます。
津別まであと少しというところで、急に雲行きが怪しくなる。空を見上げると、黒色がかった雲が頭上に広がっていました。
あたりの空気も、雨雲が迫っているとき特有の湿った匂いがして、もうじき雨がふることを示唆していました。
レインウェアを着て、ペダルをこぐ足に力をこめる。どうにか、雨が降る前にキャンプ場にたどり着きたい……!
けれど、そんな私をあざ笑うみたいに、雲からは大粒の雨が降り始めました。
雨は勢いを増して土砂降りとなる。それどころか、頭上で雷まで鳴り出しました。
雷にびくびくしながら、土砂降りの中をひたすら走ります。
雨で視界が不明瞭の中、携帯のナビを頼りに目的地であるキャンプ場にたどり着きます。
でかでかと津別21世紀の森キャンプ場と書かれた看板を見上げながら、敷地内に入る。
敷地内にはいってみたはいいものの、キャンプサイトのような場所は見当たりませんでした。ここ「津別21世紀の森キャンプ場」は、いろいろな施設が密集する複合施設なので、もしかすると今いるところとは別のところにキャンプサイトがあるのかもしれません。
地図で確認してみるも、目的地がこのだだっ広い敷地であるということ以外なにもわからない。
あたりを見渡すと、建物の立ち並ぶエリアに管理棟っぽい建物を発見します。
建物に灯りがついていたので、だれかいるようです。管理棟にいる人なら、キャンプサイトの場所を教えてくれるかもしれない。
そう思って、ずぶ濡れになりながら管理棟へと向かいます。
管理棟のドアをノックし、少しだけ扉を開けると、管理人っぽいおじさんが二人いました。
おじさんたちは、びしょ濡れになっている私に驚いていました。私が事情を説明すると、おじさんの一人がキャンプサイトの場所を教えてくれました。
どうやら、この場所をもう少し走った先にある模様。おじさんにお礼を言うと「僕も、あとでキャンプ場の点検にいくから、困ったことがあったらいってね」と言ってくださいました。ありがてえ……
管理棟を出て、おじさんの教えてくれた道を進むと、キャンプサイトが見えてきました。
水けをある程度落としてから、受付所のある小屋に入る。
受付所には、おじさんが一人いました。おじさんは驚いたような顔で私を見たあと、「風邪をひいちゃうからこれで拭いて」といって、奥からタオルを持ってきてくれました。
タオルで頭や顔を拭きながら、受付をします。その時に、自転車でキャンプしながら道東を巡っていることなどを話しました。
おじさん「テントが雨に濡れたら乾かすのが大変だろう。丁度、一人テントなら雨がしのげる場所があるから、そこをつかうといいよ」
そういって、おじさんが案内してくれたのは受付所の建物の隣にある、電車と駅のホームを模したオブジェクトでした。本来は、子供用の遊具だからテントを張るのは禁止らしいのだけれど、特別に使わせてもらうことに。(おじさん曰く、雨の日に来た旅人にたまに使わせてあげているのだとか。ありがてえ……)
駅のホームに設営したテントと愛車。
駅のホームの横幅は、一人テントがぴったりおさまるサイズでした。ホームの屋根が丁度雨を防いでくれるのと、ホームの床が地面より高い位置にあるので、昨日みたいに床が浸水する心配もありません。
テントを張る場所も決まって、少し安心する。本当は、東屋や炊事場あたりにテントを張ろうと思っていたのだけれど、そこよりもよっぽどいい場所に設営できてよかった。
旅のことなどを含め、おじさんと少しだけ話をする。
おじさん「女の子が一人旅なんて珍しいね。昔、日本一周していた女の子がきたことがあったけど、それ以来見てないなあ」
そういえば、その時も今みたいに土砂降りの雨が降っていた、なんて懐かしそう話していました。その人も、今の私みたいに駅のホームにテントを張って雨をしのいだのだとか。
確かに、女子で道東まで自転車旅をする人はそうそういないのかもしれない。それに、津別は外周のルートから外れるので、北海道一周や日本一周の人があまりこないのかもしれません。
話も早々に、おじさんは「温まってきた方がいい」と言って、津別にある公衆浴場を教えてくれました。そのほかにも、スーパーやコンビニの場所なども丁寧に教えていただいた。
ついでに、コインランドリーの場所を聞いてみると、なんと津別にはコインランドリーがないのだとか。しかたない、洗濯するのはあきらめよう。
「これをもっていくといい」といって、おじさんは私に傘を貸してくれました。おじさんには、何から何までお世話になりっぱなしで、感謝しかなかった。
おじさんからもらった傘をもって、公衆浴場の方面まで歩く。この時には、すっかり雨脚が弱まっていて、先ほどの土砂降りが嘘みたいだった。
公衆浴場で受付を済ませ、中へ入る。
身体を洗ってから湯船に入ると、お湯の温かさが全身を包み込む。ああ、極楽極楽……
雨で冷えた身体が温めたあとは、水風呂と温浴を交互に繰り返す混合浴をして、自律神経を整える。
自転車に乗ったあとの水風呂は最高で、いつまでも入っていたくなります。
水風呂に浸かっていると、サウナから出てきたおばちゃんと目が合います。ここの水風呂は、人が二人はいるのには狭いので、どくことにします。
隣の湯船に入ると、おばちゃんが話しかけてきました。
おばちゃん「見ない顔だけど、どこからきたの?」
私「神奈川の方から来ました」
おばちゃん「随分遠くから来たのねえ」
おばちゃん曰く、ここは地元の人以外ほとんど立ち寄らないので、知らない顔にはすぐ気づくのだとか。「前にも、東京からクマヤキを目当てに津別に来た人が、この銭湯にきていたなあ」なんて言っていた。クマヤキってそんな人気だったのか……
そんな話を皮切りに、おばちゃんとはいろいろな話をしました。自転車で道東を巡っているということを話すと「足がやけに鍛えられていると思ったら、自転車をやっていたのね」といって笑っていました。
どうやら、おばちゃんの旦那さんも自転車が趣味でいろんな場所を回っているらしく、その話でしばらく盛り上がりました。
おばちゃんと話し終えた後は、銭湯を出て晩飯を買うためにスーパーへ向かうことに。
銭湯を出ると、雨はすっかり上がっていました。それどころか、少し晴れてきているような気がする。
さっきの土砂降りは、いったいなんだったんだろう……(白目
スーパーで買い出しを終えた後は、キャンプ場に戻ります。
テントに潜り込み、晩飯を広げる。
今日の晩飯は、少し豪華にしました。
晩飯。今日はがっつり目。
タンパク質オブたんぱく質な晩飯をがっつきながら食べていく。走ったあとのたんぱく質大事。
生まれて初めてザンギを食べたのだけれど、しっとりとしておいしかった。
ごはんを食べおわるころにはすっかり日が落ちていて、辺りは真っ暗になっていました。
この辺りは街灯の数も少ないので、日が落ちると辺りは暗闇に包まれる。
空を見上げると、先ほどまであった雲はすっかりなくなっていて、頭上に星空が広がっていました。
電車のオブジェクトの近くにベンチがあったので、そこに寝転びながら星を眺める。
天体にはあまり詳しくないから、どの星がなになのかは全く分からないのだけれど、それでも満点の星空を眺めているだけで幸せな気持ちになります。
それに、雨なのもあってキャンプする人が少ないのもあり、ほぼ貸し切りの状態で眺められる……
ああ、幸せだ……
旅してて幸せだと思う瞬間っていくつもあるけれど、そのうちの一つが星空を眺めながらゴロゴロしてるときだと思う。最高だ。
しばらく星空を眺めていたのだけれど、雨が降った後なのもあって肌寒いのでテントに戻る。
テントに戻った後は、youtubeやツイッターを見ながらゴロゴロしてから寝ることに。
寝袋に深く入り込み、瞼を閉じる。
明日は、北海道最終日。メインの場所はもう回り終わってしまったので、明日は女満別空港に向かってただひたすら走るだけになります。それでも、最後まで北海道を楽しみつくそうと心に決める。
そんなことを考えていたら、いつの間にか眠りに落ちていました。
スヤァ……
電車のオブジェクト。
津別川。昨日雨が降ったのもあって、流れが激しい。
キャンプサイトの芝生。
津別21世紀の森キャンプ場は、広大な芝生サイトが売りのキャンプ場として知られています。
一眼で撮った愛車とテント。駅のホームにテントを張るってロマンある。
一通り、キャンプ場を巡り終わった後は、やることがなくなったので、駅のホームに座ってのんびりします。
のどかな時間が流れていくのを肌で感じる。いつも急ぎがちだけれど、こういうのんびりした時間もいいかもしれない。
のんびりしつつ、少しずつ撤収作業を始めます。
通気性がいい場所に設営したからか、昨日まで濡れていたテントはすっかり乾いていました。芝生サイトや東屋にテントを張っていたらまだ濡れたままだったかもしれないので、おじさんに感謝だ……
テントを畳んでいると、お散歩しているおばちゃんに話しかけられた。旅をしているのかと聞かれたので、道東を巡っているのだということを話しました。
おばちゃんは出身が津別で、このキャンプ場が作られるときにボランティアとして参加していたのだとか。今は別のところに住んでいるのだけれど、ひょんなことで津別による機会があり、懐かしくなってここに寄ったらしい。
他愛のない話を少しした後、おばちゃんは去っていった。
おばちゃんが去ってしばらくすると、昨日お世話になった管理人のおじさんが来たので、おじさんとも少し話をした。
昨日のお礼を言うと、おじさんは「こういうときはお互いさまだよ」といっていた。
昨日の阿寒湖畔キャンプ場のおばちゃんといい、道東のキャンプ場の管理人さんはいい人が多い気がする。
おじさんにそれを言うと、「地方は助け合いが大事なんだよ」といっていた。確かに、この広大な大地で生きるには、助け合いが大事なのかもしれない。
おじさんと話していると、もう一人管理人のおじさんがやってきました。昨日ずぶ濡れになっていたときに、管理棟で道を教えてくれたあのおじさんです。
おじさんは、私をみるなり安心したような顔をしていました。「ちゃんとたどり着けたみたいでよかった」なんて言っていた。
私は、そのおじさんに昨日のお礼を言うと、もう一人のおじさんと同じようなことを言って笑っていた。
そのあと、そのおじさんはキャンプ場の見回りに行くと言って去っていきました。
残ったおじさんと、少しだけ他愛のない話をした。
おじさん「今日は、どこまで行くの?」
私「女満別空港まで。今日帰るんです」
おじさん「そうか、じゃあまだゆっくりできるね」
そんなことを言って、おじさんは歯を見せて笑った。
私としばらく話した後、おじさんはキャンプ場内にある遊具の点検に向かった。おじさんは、子供たちがけがをしないように毎日遊具を点検しているのだとか。
こういう日々の積み重ねが安全につながっているんだろうな……
おじさんが去ってしばらくしてから、私はキャンプ場を出ました。
おじさんには、ゆっくりしていってねと言われたけれど、なにかトラブルがあって帰れなかったら困るので早めに出発します。
女満別空港までの道のりは、ほぼ平坦でした。
走っているうちに空も晴れてきて、辺りを明るく照らしていました。
女満別空港までの道。
緑と山々。奥にある山はなんていう山なんだろう。
雄大な景色を見ながらひたすら走る。
のんびり平坦を走っていると、目の前に上りが現れます。
そういえば、キャンプ場のおじさんが女満別空港近くに上りがあると言っていたなあ。
上りがあるということは、女満別空港まで近いのかもしれない。
そんなことを考えながら上りを超え、しばらく走ると、見覚えのある道が見えてきました。
出発の時にも見た、ベゴニアの花壇がある道をひたすら走ると、この旅の終着点が見えてきました。
女満別空港だ!!
4日前に出発した女満別空港へと帰ってきました。
時刻は、もうそろそろ10時でした。飛行機は13時のに乗る予定だったので、3時間近くも時間が余ってしまいました。
予定よりも早い到着で少し困惑する。これだったら、もう少し早く出て、網走まで走るのもよかったかもしれません。
とりあえず、預け荷物だけ先に預けてしまうことに決める。コインロッカーからOS-500を回収して、自転車と荷物を詰めることにします。
完走後の愛車。雨の中走ってきたのもあって、ところどころ汚れている。
自転車と荷物を詰め込んだOS-500をエアドゥの手荷物預かり所に預けてから、お土産屋さんあたりをぶらぶらする。
お土産屋さんには、今まで行ってきた場所にゆかりのあるものが沢山置かれていました。思わず手に取って、その時の光景を思い出したりしてしまう。
摩周湖のお土産を見たときは地獄の道のりを思い出し、阿寒湖のお土産を見たときは、キャンプ場のおばちゃんや銭湯のおばちゃんのやさしさを思い出した。
今回の旅は状況だけ見ると最悪な旅だったのだけれど、それでもいろいろな人と出会えて楽しかった。
しばらくお土産屋さんを巡ってみたけれど、それでも大幅に時間が余ってしまいました。
いつも、最終日は飛行機に必ずたどり着けるように十分な余裕を持たせているのですが、いつも時間が余ってしまう。
これからは、もう少しルートを考えたほうがいいかもしれない。
空港内をぶらぶらしていると、レストランの立ち並ぶエリアにスープカレー屋があるのが目に入ります。
実は、富良野・美瑛を旅したときに札幌で食べたスープカレーがとてもおいしかったので、今度来た時もまた食べたいと思っていました。
ルート内にスープカレー屋さんがなかったので、今回の旅では食べられないと思っていたのだけれど、うれしい誤算です。
早速、店の中に入ってスープカレーを注文します。
スープカレー。
スープカレーを一口ほおばると、スパイシーな香りが口いっぱいに広がります。サラサラとした口当たりに反して味は濃厚で、肉や野菜のうまみがぎゅっと凝縮されているかのような味わいでした。うまい。
スープカレー屋を出てからまた暇になったので、お土産屋さんを再びうろうろする。
歩いていたら、ふと「白い恋人」のアイスクリームの看板を発見。なにそれ、絶対にうまいにきまってるじゃん……
白い恋人ソフト。滑らかな口当たりでおいしい。
買っちった。
一口食べると、チョコの甘みとアイスクリームの滑らかな食感が口内を占める。幸せ……
アイスを食べたりぶらぶらしたりしたら、あっという間に飛行機の搭乗時間になりました。手続きをして、待合室の中に入る。
待合室で少し待ち、搭乗案内が出てから飛行機に乗り込みます。
飛行機の座席に座って外を見る。
視線の先には、発着場が広がっていた。まだ昼間なのもあって、辺りは明るい。
外を眺めていたら、飛行機が少しずつ動き出しました。
ああ、また旅が終わるんだなあ。
流れていく景色を眺めながら、そんなことを思う。
同時に、今回の旅に思いを馳せる。
今回の旅は、連日雨だったのもあって、試される大地度の高い旅だったと思う。
だけれど、そんな中でもなんとか走り切った。様々なトラブルに見舞われたけれど、いろんな人に助けられながらなんとかやってこれた気がします。
去年に美瑛・富良野を旅したときは、広大な北海道にただただ圧倒されていたけれど、今回は圧倒されるだけじゃなく、変わりゆく環境に臨機応変に対応できていたような気がします。
だから、前回は「北海道に負けた」けれど、今回は「北海道に勝った」のではなかろうか。とりあえず、今回の旅の目的は果たすことができました。
去年よりも体力面もメンタル面も強くなっていることをうれしくおもいながら、次の旅先に思いを馳せる。
次なる冒険の期待とともに、こう思う。
さあ、次はどこへいこうか?
オンネトーと愛車。
三日目:いざ、オンネトーへ!(阿寒湖~津別)
アラームの音で目を覚ます。時刻は、朝の6時。
目を覚ましてすぐに、外の天気をチェックします。テントの小窓を開けて外を見てみると、どうやら雨は止んでいるようでした。とりあえず、雨が降っていないのを見て一安心します。
天気予報によると、今日も時々雨が降るようでした。ただし、昨日よりも走行距離が少ないので、今日はそこまで焦ることもなさそうです。
朝食代わりのカロリーメイトを食べてから、撤収の準備を始めます。
荷物はバスタオルやタオルを下に敷いていたおかげで無事だったのだけれど、テントの下は東屋の水はけが悪いのもあって、水が溜まってずぶ濡れになっていました。特に、テントの下に敷いていたグラウンドシートは床の面に張り付いてしまっていて、しまうのが大変でした。
私の使っているテントのマイティドームは、全体がゴアテックスでできていて、雨などの悪天候時でも野営できる優れものなのだけれど、いかにゴアテックスとはいえ、底面の水ははじいてくれないようです(それでも、底面以外からの浸水はなかったので、シングルウォールテントとしては十分すぎる性能だと思います)。
今後は何かしらの対策が必要だなあ、と思いながら、濡れて重くなったテントをしまっていきます。
荷物を自転車に取り付けて、キャンプ場を後にします。
まずは、昨日雨で見られなかった阿寒湖へ向かうことに。
どうせだから、観光がてらにアイヌコタンのほうを通っていくことにします。
アイヌコタンの入り口
アイヌコタンの街並み。独特な街並みをしている。
アイヌコタンは、現在でもアイヌの人々が暮らしている場所なのだとか。
それもあって、このエリアには独特な空気が流れていているような気がする。
アイヌコタンでは、アイヌの人たちが作ったアクセサリーなどのお土産が買えるのだけれど、今は早朝なのもあって店は開いていませんでした。
アイヌコタンの独特な街並みを抜けると、阿寒湖がすぐに見えてきます。
早朝の阿寒湖。
うーん、微妙!
今日の阿寒湖は、雲のせいで辺り一面を暗くしているのもあって、そこまで綺麗ではありませんでした。
ただ、周りを緑に囲まれた阿寒湖は雄大で、晴天だったらさぞかし綺麗だっただろうと思いました。
少しの間だけ阿寒湖をぼーっと眺めた後、次の目的地へ向かうことにします。
次に向かうのは、道東のなかでも屈指の絶景を誇るオンネトーです。
津別へいく道からは少し外れてしまうけれど、道東に行ったら必ず立ち寄ろうと決めていた場所だったので、少し寄り道します。
オンネトーの方へと向かう道を走っていると、両脇が森のような道に差し掛かります。
オンネトーの途中の道。ゆるい上り坂が続く。
オンネトーへの道は、勾配がそこそこの長い上り坂が続いていました。
あまりにも長すぎて、度々足を付きながら上っていきました。
昨日もそうだったけれど、道東はそこそこの上り坂が長く続いている場所が多い気がします。そういう地形なんだろうか……
なんにせよ、持久戦が苦手な私にとって、そこそこの上りが長く続く状況はしんどかったです。
オンネトーへ行く道の端にあったフキ。
オンネトーへいくまでの道の端っこには、立派なフキが沢山生えていました。巨大なフキが花畑のように道路脇に広がっているのを見て、ここが北海道であることを改めて実感します。
道路脇のフキを眺めながら、えっちらおっちら上っていると、森の奥から何かが動くような物音がしました。
思わず目を向けると、そこには死ぬほどでかいエゾシカが佇んでいました。
昨日もキャンプ場でもエゾシカを見たけれど、明るい場所で見ているからか、それとも昨日よりも近くで見ているからか、昨日みたものよりも格段に大きく感じました。
エゾシカはしばらく私のことを見つめた後、森の中へと消えていきました。地面を蹴る後ろ足の筋肉は美しく波打っていて、その筋肉美に思わず見惚れてしまう。
これが、試される大地に生きる生き物か……
北海道の厳しい気候に生きる生き物のたくましさと美しさを垣間見た瞬間でした。
エゾシカの筋肉美に感動しつつ、オンネトーへの道をひたすら突き進む。
たまに、携帯で時間を確認していたのだけれど、ふと見てみると、携帯の左上に「圏外」の二文字が表示されているのに気づきます。ついに電波が届かなくなったか……
昼間からエゾシカがでるような森の中なのだから、電波が届かなくなるのも当然かと納得する。
とりあえず、グーグルマップは使えるようだったので、マップを頼りにオンネトーへと向かいます。
上りにばてて、自転車を引いて歩きながらオンネトーを目指します。上り坂は、途方に暮れるほどずっと続いていて、上りが苦手な私には地獄のような道のりでした。
自転車を引きながら、車も通らないような道を上っていきます。森からは、木々を揺らす風の音や鳥の鳴き声が聞こえきて気持ちいい。ちょっとしたハイキングみたいです。
ひたすらの上りのなかでも、たまに下りがあるときがあったので、その時は自転車に乗ります。
ただ、その時にトラブルが発生。
フロントの変速ができない(白目
フロントをインナーからアウターに変速しようとしても、アウターのほうにチェーンがかからなくなってしまいました。
このトラブルは、前に美瑛・富良野に行った時も起こったことがありました。原因は、フロントバッグがワイヤーを圧迫して干渉してしまっているから。
だから、フロントバッグを持ち上げるなりして、ワイヤーへの干渉を避けると変速できる場合が多いのだけれど、今回はそれでもうんともすんともいいません。
結局、チェーンを手でいじって無理やりアウターにはめて変速します。完全に力業。
そんなこんなで何もない森の中を走っていたら、建物のある場所が見えてきました。どうやら、温泉宿のようです。
温泉宿の周りには、硫黄のようなにおいが立ち込めていました。
温泉宿の周りに流れていた白い液体。
建物の周りには、白く濁った液体が川のように流れていました。最初は汚い川だと思っていたのだけれど、よく見ると川からは湯気のようなものが立ち込めていました。手をかざすと少し温かい。
これ、温泉だ……!!
しかも、バリバリの源泉。こんな風に源泉が自然に流れている所は初めて見たので、少しテンションが上がる。
一昨日の和琴温泉もそうだけれど、北海道は厳選かけ流しのところが多い印象にあります。そんなに温泉が沢山ある地形なんだろうか。
そんなことを考えながら歩いていると、温泉宿の近くにトイレを発見しました。少しここで休憩することにします。
自動販売機もあったので、水を補給していくことにします。水がほとんどなくなっていたので、ここで補給できるのはありがたい。
それにしても、道東は補給場所が本当にない(n度目
どんなに人手のない場所でも、自動販売機の一つや二つあるものなのだけれど、道東エリアはそれすらない状況。
今は、雨が降ったのもあって涼しいから何とかなっているけれど、暑い日とかはどうしているのだろう。あんまり考えたくないなあ……(白目
北海道は「試される大地」という異名を持っているけれど、道東では特にその色が濃いような気がしました。
休憩をした後は、再びオンネトーを目指して走ります。
温泉宿を過ぎると、長い下りにさしかかります。
いままで、死ぬほど長い上りをこなしていた身としては、天国のような状況です。ヒャッホーーー!!
もしやこのままオンネトーへと向かえるのではないかと思っていたのだけれど、そうは問屋が許さない。
長い下りの先には、再び長い上りがお出迎えしていて、思わず白目を剥く。また上るのかー
疲労した足で、何とか上りをこなしていきます。果てしなく続くのではないかと思うような上りを超えると、ついにオンネトーに到着します。
オンネトーに到着したときの写真。
適当な場所に自転車を置いて、オンネトーが良く見える場所まで移動します。
湖の淵の近くまで移動し、目の前に佇むオンネトーを見たとき、一瞬呼吸を忘れた。
オンネトー。
目の前には、綺麗な碧をした湖が佇んでいました。透き通った湖面には、湖を取り囲む針葉樹が移りこんでいて、それがまた幻想的な雰囲気を醸し出していた。
空は相変わらず鈍色をしていたけれど、そんなことは関係ないように、オンネトーは美しかった。
しばらく、その美しい碧に見惚れてしまって、そこから離れることが出来ませんでした。
目の前の感動をなんとか写真に残したくて、一眼を取り出す。北海道に来てから、撮影時にずっとエラーを吐き出して撮影できないカメラだけど、それでもどうかここだけでも……!
頼む!この景色だけでいいから撮れてくれ…!!
祈りと共にカメラのシャッターを切る。
すると、その思いにこたえてくれたのか、軽快なシャッター音とともに、目の前の景色が切り取られた。
バリアングルモニターで確認すると、そこには目の前にある美しいオンネトーが映っていました。
か、カメラ……!!
「ありがとうカメラ……!ありがとう……!!」と、カメラにひたすら感謝する。
この景色が撮れただけでも、北海道に来た意味があった……!
一通り撮影し終えてから、オンネトーを望める別の場所に行ってみることにしました。
オンネトーは、見る場所によって色が変わると言われているので、別の場所でどう見えるのか見てみたかったのです。
自転車を少し走らせて、次の場所に向かいます。
オンネトーの見える地点にたどり着くと、先ほどよりも開けた景色が目の前に広がっていました。
別の地点からみたオンネトー
湖の周りに広大な針葉樹林が広がっていて、先ほどよりも雄大な印象。
先ほどみた場所でみたオンネトーは「秘境にかくれて佇んでいる湖」っぽかったのだけれど、こっちは「雄大な湖」って感じ。随分印象が違う。
先ほど見た場所でのオンネトーは美しい碧に輝いていたけれど、こちらは若干紫っぽい色をしているような気がします。
先ほどとは違う良さに、心をばっちり奪われてしまっていて、再び目の前の景色に没頭してしまう。
曇天でも美しいのだから、晴れたらもっと綺麗なんだろうな……なんて思いながら、オンネトーを眺めていた。
この地点には、オンネトーにせり出すようにテラスのような場所があったので、そこで愛車を撮影することに。
オンネトーと愛車。
オンネトーと愛車のツーショットに、ひそかにテンションが上がってしまう私。
このときにも、エラーなく一眼で写真を撮ることができました。
オンネトーに来てから、一眼で普通に撮影できていることに驚きます。もしや、これはオンネトーの力なんだろうか……?
あまりに神秘的な場所だから、そんなことすら考えてしまう。
オンネトーがあまりに絶景だったから離れがたかったのだけれど、今日の目的地である津別まで走らなければならなかったので出発します。雨がいつ降るかもわからないし、早めに行動しておく方がいい。
今度は、天気がいいときにまた来よう。
そんなことを思いながら、オンネトーを後にします。
先ほど上ってきた場所を下り、下ってきた場所を死んだ顔で上っていく。
温泉宿のあったところまで戻ると、いままで苦しめてきた果てしない上りが、今度は最強の味方として目の前に君臨していました。
下り坂をジェットコースターのように飛ばして走っていきます。いままで上ってきた地獄を一気に下っていくこの爽快さよ……
これもあって、上りはやめられないと思う。
ごきげんになりながら飛ばしていると、ぱっとしない天気だった空がみるみる青空になっていきます。それをみて、さらにテンションが上がる。最高だぜ……!
目的地である津別を目指して、下り坂をひたすら飛ばした。
オンネトーから戻るときに撮った写真。心なしか、天気も良くなってきていてテンションがあがる。
オンネトーと津別へ行く道の分岐点まで戻ってきて、今度は津別の方に向かって走ります。
この辺りもひたすら下りで、すいすいと走っていく。今までの地獄が嘘みたいに楽ちんでした。
広い大地をすいすいと走ってく感じが面白くて、思わず鼻歌を歌いながら走る。
津別まで、あと34km!
夏って感じの雲。
ひたすら下っていると、目の前に「道の駅 あいおい」が見えてきたので、ここでお昼を食べることにしました。
道の駅あいおい。ここでは、「クマヤキ」というたい焼きみたいな食べ物が人気なのだとか。
この「道の駅 あいおい」では、クマヤキというクマの型で作ったたい焼きのような食べ物が人気なことで知られています。
それもあって、道の駅内にはクマヤキ関連のグッズがぎっしりならんでいました。
それらを横目に見つつ、道の駅の中にある蕎麦屋へと向かいます。
鴨南蛮そば!
鴨はしっとり、ネギはシャキシャキ具合を失わない程度に汁に浸っていておいしい。
少ししょっぱい汁が、塩分の抜けた身体に染み渡っていく……
夢中で食べていると、いつのまにかなくなっていました。正直、もう一杯食べたいくらいおいしかった。
腹ごしらえを終えたあとは一旦外に出て、ここの一番の目玉である「クマヤキ」の売店へ。
クマヤキの売店には、平日なのにまばらに人がいました。
メニューには、定番のあんこやカスタードのほかに、カスタードとタピオカ入りのものもありました。地味に流行にのっとっている……!
私は、無難にあんこを注文します。受取所で受け取ったほくほくのクマヤキにかじりつく。
道の駅あいおいで買ったクマヤキ。ほんのり温かい。
クマヤキは、外はたい焼きと同じようにふわっとしており、その中にあんこがぎっしりと詰まっていました。
一口かじるごとに、あんこの優しい甘さが口の中いっぱいに広がっていって、幸せな気分になります。
う、うめえ……
クマヤキのおいしさをかみしめながら食べていたら、気づいたらなくなっていました。
もう一個食べようかなと思ったけれど、鴨南蛮そばを食べたあとなのもあって、胃が重いのでやめておくことにする。本当は、タピオカ味とかも気になってたんだけど仕方ない。
食後にベンチでぼーっとしながらスマホの時計を見ると、まだ13時を過ぎたところでした。
道を見たところ、しばらく下りが続くようなので、焦る必要もなさそうです。雨も、この天気ならきっと降らない気がします。
もう少しゆっくりしていくことにしよう……
そんなことを考えながら、道の駅内にある物販店を物色することに。
物販店では、クマヤキTシャツやクマヤキ缶バッチなどが売られていました。
クマヤキのロゴのデザインが好きなのもあって、Tシャツや缶バッチを思わず手に取ってしまう。
この絶妙なデザインセンスが私の心をくすぐる。
ほしい……!
けれど、テントの床面の浸水を防ぐためのタオル類などを積んでいるのもあって、自転車に着けている各バッグの積載容量はすでに限界を迎えていました。郵送という手もあるけれど、送料を考えるとコスパが悪い。
5秒くらい悩んだ末、Tシャツと缶バッチを手にレジへ走り出す。迷った時は買うしかねえ……!
早速、買った缶バッチをカメラバッグにつける。Tシャツの方は、タオル類と一緒にサドルバッグの紐に括り付けることにしました。
買い物も終わったので、そろそろ出発することに。
道の駅あいおいを出て、津別方面に向かって走ります。
津別方面は相変わらず長い下りが続いていて、漕がなくてもすいすいと進んでいきます。
津別まであと少しというところで、急に雲行きが怪しくなる。空を見上げると、黒色がかった雲が頭上に広がっていました。
あたりの空気も、雨雲が迫っているとき特有の湿った匂いがして、もうじき雨がふることを示唆していました。
レインウェアを着て、ペダルをこぐ足に力をこめる。どうにか、雨が降る前にキャンプ場にたどり着きたい……!
けれど、そんな私をあざ笑うみたいに、雲からは大粒の雨が降り始めました。
雨は勢いを増して土砂降りとなる。それどころか、頭上で雷まで鳴り出しました。
雷にびくびくしながら、土砂降りの中をひたすら走ります。
雨で視界が不明瞭の中、携帯のナビを頼りに目的地であるキャンプ場にたどり着きます。
でかでかと津別21世紀の森キャンプ場と書かれた看板を見上げながら、敷地内に入る。
敷地内にはいってみたはいいものの、キャンプサイトのような場所は見当たりませんでした。ここ「津別21世紀の森キャンプ場」は、いろいろな施設が密集する複合施設なので、もしかすると今いるところとは別のところにキャンプサイトがあるのかもしれません。
地図で確認してみるも、目的地がこのだだっ広い敷地であるということ以外なにもわからない。
あたりを見渡すと、建物の立ち並ぶエリアに管理棟っぽい建物を発見します。
建物に灯りがついていたので、だれかいるようです。管理棟にいる人なら、キャンプサイトの場所を教えてくれるかもしれない。
そう思って、ずぶ濡れになりながら管理棟へと向かいます。
管理棟のドアをノックし、少しだけ扉を開けると、管理人っぽいおじさんが二人いました。
おじさんたちは、びしょ濡れになっている私に驚いていました。私が事情を説明すると、おじさんの一人がキャンプサイトの場所を教えてくれました。
どうやら、この場所をもう少し走った先にある模様。おじさんにお礼を言うと「僕も、あとでキャンプ場の点検にいくから、困ったことがあったらいってね」と言ってくださいました。ありがてえ……
管理棟を出て、おじさんの教えてくれた道を進むと、キャンプサイトが見えてきました。
水けをある程度落としてから、受付所のある小屋に入る。
受付所には、おじさんが一人いました。おじさんは驚いたような顔で私を見たあと、「風邪をひいちゃうからこれで拭いて」といって、奥からタオルを持ってきてくれました。
タオルで頭や顔を拭きながら、受付をします。その時に、自転車でキャンプしながら道東を巡っていることなどを話しました。
おじさん「テントが雨に濡れたら乾かすのが大変だろう。丁度、一人テントなら雨がしのげる場所があるから、そこをつかうといいよ」
そういって、おじさんが案内してくれたのは受付所の建物の隣にある、電車と駅のホームを模したオブジェクトでした。本来は、子供用の遊具だからテントを張るのは禁止らしいのだけれど、特別に使わせてもらうことに。(おじさん曰く、雨の日に来た旅人にたまに使わせてあげているのだとか。ありがてえ……)
駅のホームに設営したテントと愛車。
駅のホームの横幅は、一人テントがぴったりおさまるサイズでした。ホームの屋根が丁度雨を防いでくれるのと、ホームの床が地面より高い位置にあるので、昨日みたいに床が浸水する心配もありません。
テントを張る場所も決まって、少し安心する。本当は、東屋や炊事場あたりにテントを張ろうと思っていたのだけれど、そこよりもよっぽどいい場所に設営できてよかった。
旅のことなどを含め、おじさんと少しだけ話をする。
おじさん「女の子が一人旅なんて珍しいね。昔、日本一周していた女の子がきたことがあったけど、それ以来見てないなあ」
そういえば、その時も今みたいに土砂降りの雨が降っていた、なんて懐かしそう話していました。その人も、今の私みたいに駅のホームにテントを張って雨をしのいだのだとか。
確かに、女子で道東まで自転車旅をする人はそうそういないのかもしれない。それに、津別は外周のルートから外れるので、北海道一周や日本一周の人があまりこないのかもしれません。
話も早々に、おじさんは「温まってきた方がいい」と言って、津別にある公衆浴場を教えてくれました。そのほかにも、スーパーやコンビニの場所なども丁寧に教えていただいた。
ついでに、コインランドリーの場所を聞いてみると、なんと津別にはコインランドリーがないのだとか。しかたない、洗濯するのはあきらめよう。
「これをもっていくといい」といって、おじさんは私に傘を貸してくれました。おじさんには、何から何までお世話になりっぱなしで、感謝しかなかった。
おじさんからもらった傘をもって、公衆浴場の方面まで歩く。この時には、すっかり雨脚が弱まっていて、先ほどの土砂降りが嘘みたいだった。
公衆浴場で受付を済ませ、中へ入る。
身体を洗ってから湯船に入ると、お湯の温かさが全身を包み込む。ああ、極楽極楽……
雨で冷えた身体が温めたあとは、水風呂と温浴を交互に繰り返す混合浴をして、自律神経を整える。
自転車に乗ったあとの水風呂は最高で、いつまでも入っていたくなります。
水風呂に浸かっていると、サウナから出てきたおばちゃんと目が合います。ここの水風呂は、人が二人はいるのには狭いので、どくことにします。
隣の湯船に入ると、おばちゃんが話しかけてきました。
おばちゃん「見ない顔だけど、どこからきたの?」
私「神奈川の方から来ました」
おばちゃん「随分遠くから来たのねえ」
おばちゃん曰く、ここは地元の人以外ほとんど立ち寄らないので、知らない顔にはすぐ気づくのだとか。「前にも、東京からクマヤキを目当てに津別に来た人が、この銭湯にきていたなあ」なんて言っていた。クマヤキってそんな人気だったのか……
そんな話を皮切りに、おばちゃんとはいろいろな話をしました。自転車で道東を巡っているということを話すと「足がやけに鍛えられていると思ったら、自転車をやっていたのね」といって笑っていました。
どうやら、おばちゃんの旦那さんも自転車が趣味でいろんな場所を回っているらしく、その話でしばらく盛り上がりました。
おばちゃんと話し終えた後は、銭湯を出て晩飯を買うためにスーパーへ向かうことに。
銭湯を出ると、雨はすっかり上がっていました。それどころか、少し晴れてきているような気がする。
さっきの土砂降りは、いったいなんだったんだろう……(白目
スーパーで買い出しを終えた後は、キャンプ場に戻ります。
テントに潜り込み、晩飯を広げる。
今日の晩飯は、少し豪華にしました。
晩飯。今日はがっつり目。
タンパク質オブたんぱく質な晩飯をがっつきながら食べていく。走ったあとのたんぱく質大事。
生まれて初めてザンギを食べたのだけれど、しっとりとしておいしかった。
ごはんを食べおわるころにはすっかり日が落ちていて、辺りは真っ暗になっていました。
この辺りは街灯の数も少ないので、日が落ちると辺りは暗闇に包まれる。
空を見上げると、先ほどまであった雲はすっかりなくなっていて、頭上に星空が広がっていました。
電車のオブジェクトの近くにベンチがあったので、そこに寝転びながら星を眺める。
天体にはあまり詳しくないから、どの星がなになのかは全く分からないのだけれど、それでも満点の星空を眺めているだけで幸せな気持ちになります。
それに、雨なのもあってキャンプする人が少ないのもあり、ほぼ貸し切りの状態で眺められる……
ああ、幸せだ……
旅してて幸せだと思う瞬間っていくつもあるけれど、そのうちの一つが星空を眺めながらゴロゴロしてるときだと思う。最高だ。
しばらく星空を眺めていたのだけれど、雨が降った後なのもあって肌寒いのでテントに戻る。
テントに戻った後は、youtubeやツイッターを見ながらゴロゴロしてから寝ることに。
寝袋に深く入り込み、瞼を閉じる。
明日は、北海道最終日。メインの場所はもう回り終わってしまったので、明日は女満別空港に向かってただひたすら走るだけになります。それでも、最後まで北海道を楽しみつくそうと心に決める。
そんなことを考えていたら、いつの間にか眠りに落ちていました。
スヤァ……
最終日:さよなら道東。また来る日まで(津別~女満別)
アラームの音で目を覚ます。時刻は、朝7時。
黄色い天井を眺めながら、今日が道東旅の最終日であるということをぼんやりと考える。
今日は、津別から女満別空港に行く以外にやることがありません。帰りの便はお昼すぎに出るので、それまでに空港についていればいい。
津別から女満別空港までは30km程度なので、のんびりしていても余裕で間に合う距離。ただ、もう一つどこかを観光できるほどの余裕はないという微妙な距離です。網走まで走るには少し遠いしなあ……
結局、どこにも行かずにキャンプ場をぶらぶらすることに。
電車のオブジェクト。
津別川。昨日雨が降ったのもあって、流れが激しい。
キャンプサイトの芝生。
津別21世紀の森キャンプ場は、広大な芝生サイトが売りのキャンプ場として知られています。
一眼で撮った愛車とテント。駅のホームにテントを張るってロマンある。
一通り、キャンプ場を巡り終わった後は、やることがなくなったので、駅のホームに座ってのんびりします。
のどかな時間が流れていくのを肌で感じる。いつも急ぎがちだけれど、こういうのんびりした時間もいいかもしれない。
のんびりしつつ、少しずつ撤収作業を始めます。
通気性がいい場所に設営したからか、昨日まで濡れていたテントはすっかり乾いていました。芝生サイトや東屋にテントを張っていたらまだ濡れたままだったかもしれないので、おじさんに感謝だ……
テントを畳んでいると、お散歩しているおばちゃんに話しかけられた。旅をしているのかと聞かれたので、道東を巡っているのだということを話しました。
おばちゃんは出身が津別で、このキャンプ場が作られるときにボランティアとして参加していたのだとか。今は別のところに住んでいるのだけれど、ひょんなことで津別による機会があり、懐かしくなってここに寄ったらしい。
他愛のない話を少しした後、おばちゃんは去っていった。
おばちゃんが去ってしばらくすると、昨日お世話になった管理人のおじさんが来たので、おじさんとも少し話をした。
昨日のお礼を言うと、おじさんは「こういうときはお互いさまだよ」といっていた。
昨日の阿寒湖畔キャンプ場のおばちゃんといい、道東のキャンプ場の管理人さんはいい人が多い気がする。
おじさんにそれを言うと、「地方は助け合いが大事なんだよ」といっていた。確かに、この広大な大地で生きるには、助け合いが大事なのかもしれない。
おじさんと話していると、もう一人管理人のおじさんがやってきました。昨日ずぶ濡れになっていたときに、管理棟で道を教えてくれたあのおじさんです。
おじさんは、私をみるなり安心したような顔をしていました。「ちゃんとたどり着けたみたいでよかった」なんて言っていた。
私は、そのおじさんに昨日のお礼を言うと、もう一人のおじさんと同じようなことを言って笑っていた。
そのあと、そのおじさんはキャンプ場の見回りに行くと言って去っていきました。
残ったおじさんと、少しだけ他愛のない話をした。
おじさん「今日は、どこまで行くの?」
私「女満別空港まで。今日帰るんです」
おじさん「そうか、じゃあまだゆっくりできるね」
そんなことを言って、おじさんは歯を見せて笑った。
私としばらく話した後、おじさんはキャンプ場内にある遊具の点検に向かった。おじさんは、子供たちがけがをしないように毎日遊具を点検しているのだとか。
こういう日々の積み重ねが安全につながっているんだろうな……
おじさんが去ってしばらくしてから、私はキャンプ場を出ました。
おじさんには、ゆっくりしていってねと言われたけれど、なにかトラブルがあって帰れなかったら困るので早めに出発します。
女満別空港までの道のりは、ほぼ平坦でした。
走っているうちに空も晴れてきて、辺りを明るく照らしていました。
女満別空港までの道。
緑と山々。奥にある山はなんていう山なんだろう。
雄大な景色を見ながらひたすら走る。
のんびり平坦を走っていると、目の前に上りが現れます。
そういえば、キャンプ場のおじさんが女満別空港近くに上りがあると言っていたなあ。
上りがあるということは、女満別空港まで近いのかもしれない。
そんなことを考えながら上りを超え、しばらく走ると、見覚えのある道が見えてきました。
出発の時にも見た、ベゴニアの花壇がある道をひたすら走ると、この旅の終着点が見えてきました。
女満別空港だ!!
4日前に出発した女満別空港へと帰ってきました。
時刻は、もうそろそろ10時でした。飛行機は13時のに乗る予定だったので、3時間近くも時間が余ってしまいました。
予定よりも早い到着で少し困惑する。これだったら、もう少し早く出て、網走まで走るのもよかったかもしれません。
とりあえず、預け荷物だけ先に預けてしまうことに決める。コインロッカーからOS-500を回収して、自転車と荷物を詰めることにします。
完走後の愛車。雨の中走ってきたのもあって、ところどころ汚れている。
自転車と荷物を詰め込んだOS-500をエアドゥの手荷物預かり所に預けてから、お土産屋さんあたりをぶらぶらする。
お土産屋さんには、今まで行ってきた場所にゆかりのあるものが沢山置かれていました。思わず手に取って、その時の光景を思い出したりしてしまう。
摩周湖のお土産を見たときは地獄の道のりを思い出し、阿寒湖のお土産を見たときは、キャンプ場のおばちゃんや銭湯のおばちゃんのやさしさを思い出した。
今回の旅は状況だけ見ると最悪な旅だったのだけれど、それでもいろいろな人と出会えて楽しかった。
しばらくお土産屋さんを巡ってみたけれど、それでも大幅に時間が余ってしまいました。
いつも、最終日は飛行機に必ずたどり着けるように十分な余裕を持たせているのですが、いつも時間が余ってしまう。
これからは、もう少しルートを考えたほうがいいかもしれない。
空港内をぶらぶらしていると、レストランの立ち並ぶエリアにスープカレー屋があるのが目に入ります。
実は、富良野・美瑛を旅したときに札幌で食べたスープカレーがとてもおいしかったので、今度来た時もまた食べたいと思っていました。
ルート内にスープカレー屋さんがなかったので、今回の旅では食べられないと思っていたのだけれど、うれしい誤算です。
早速、店の中に入ってスープカレーを注文します。
スープカレー。
スープカレーを一口ほおばると、スパイシーな香りが口いっぱいに広がります。サラサラとした口当たりに反して味は濃厚で、肉や野菜のうまみがぎゅっと凝縮されているかのような味わいでした。うまい。
スープカレー屋を出てからまた暇になったので、お土産屋さんを再びうろうろする。
歩いていたら、ふと「白い恋人」のアイスクリームの看板を発見。なにそれ、絶対にうまいにきまってるじゃん……
白い恋人ソフト。滑らかな口当たりでおいしい。
買っちった。
一口食べると、チョコの甘みとアイスクリームの滑らかな食感が口内を占める。幸せ……
アイスを食べたりぶらぶらしたりしたら、あっという間に飛行機の搭乗時間になりました。手続きをして、待合室の中に入る。
待合室で少し待ち、搭乗案内が出てから飛行機に乗り込みます。
飛行機の座席に座って外を見る。
視線の先には、発着場が広がっていた。まだ昼間なのもあって、辺りは明るい。
外を眺めていたら、飛行機が少しずつ動き出しました。
ああ、また旅が終わるんだなあ。
流れていく景色を眺めながら、そんなことを思う。
同時に、今回の旅に思いを馳せる。
今回の旅は、連日雨だったのもあって、試される大地度の高い旅だったと思う。
だけれど、そんな中でもなんとか走り切った。様々なトラブルに見舞われたけれど、いろんな人に助けられながらなんとかやってこれた気がします。
去年に美瑛・富良野を旅したときは、広大な北海道にただただ圧倒されていたけれど、今回は圧倒されるだけじゃなく、変わりゆく環境に臨機応変に対応できていたような気がします。
だから、前回は「北海道に負けた」けれど、今回は「北海道に勝った」のではなかろうか。とりあえず、今回の旅の目的は果たすことができました。
去年よりも体力面もメンタル面も強くなっていることをうれしくおもいながら、次の旅先に思いを馳せる。
次なる冒険の期待とともに、こう思う。
さあ、次はどこへいこうか?
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